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アニメ・ゲーム研究-2010-04

【第4回】アニメーション作品の形式分析

 アニメという形式を効果的に見せる技

第2回の授業では、2コマのアニメを描いてもらったり、残像効果などの「視覚」についてのお話をしました。第3回では、どのようにアニメ作品が発展してきたかを見てきました。第4回になる今回は、アニメーションがどのように作られているかについて考えてみましょう。

アニメーションの制作者は、視聴者に様々な感情を持ってもらったり、考えてもらったりするために、作品に対して工夫をしています。それらについて、全てとはいきませんが少し紹介していきます。

ちなみに、新しい作家、新しい作品が生まれるたびに、新しい技法や演出術が生まれています。今日紹介するものは、過去のものであり、日々変化していっているのだということも忘れないでください。例としていうと、最近、立体映像を新機軸にしようという動きが映像業界全般に広がっています。立体映像は、「飛び出して見える」という新しい感覚を与えるものなので、それをどのように効果的に使えるかについての演出術は、まだ未発達な分野です。これから、新しい作品がどんどん作られることになれば、新しい立体映像の見せ方が生まれていくことでしょう。現在のところ、「目の前に飛び出してくる」=「びっくりさせる」や、空間の広がりを見せることに使われていることが多いのですが、個人的には、もっと使い方があると思っています。その辺についても少しお話します。

 何が材料として使われているか

何のための材料か

アニメーション表現には、様々な材料が用いられています。何を作るための材料が必要なのでしょうか?

ズバリ、それは「連続性のある絵」です。
連続性の感じられる、少しずつ違った形や色の絵が生み出せる材料が必要とされるのです。人形や粘土がアニメーション制作にはよく用いられるのですが、それは人形ならば、少しづつポーズを変えることで、連続性のある人形の絵をたくさん簡単に作れるからなのです。

もう少し付け加えると、人形や粘土で連続した絵を作るためには、写真技術が必要です。カメラですね。カメラを使うという前提があってはじめて、人形や粘土はアニメにできるのです。カメラを用いないで、連続した絵を作る方法の一つは版画技術、印刷技術がありますね。ハンコは同じ絵をたくさん作ることができますので、連続した絵を簡単に作ることができます。さらにもっと簡単にたくさん同じような絵を作る方法。現在はもっと簡単に大量の絵を作る技術が存在します。それは?

セルアニメの場合はどうか

では、セルアニメではどうでしょうか。セルアニメでは、動画部分を紙に直接鉛筆で線画を描き、線を透明なセルシートに転写し、絵の具で色を付けるという工程を経て、1枚の動画セルが完成します。しかし、それでは、背景がないので、背景は別の紙に水彩画で描いて作ります。こうしてできた絵を撮影台で重ねて撮影していきます。動画セルを入れ替えながら、背景を少しずつズラしたりしながら、撮影していきます。そうして、1カットのアニメ映像が作られ、これらのカットをさらに編集機で繋ぎあわせて1本のフィルムになるのです。

現在では、この工程をデジタルに置き換えて制作しています。まず、セルシートというものが無くなりました。紙に描いた線画は直接スキャナでデジタル画像としてコンピュータに取り込まれます。アニメスタジオによっては、ペンタブレットを使って直接コンピュータ上で作画しているところもあります。これについては、背景美術も同様です。撮影の工程もデジタルです。すでに絵はデータになっていますから、カメラで撮影する必要がありません。タイムシートに合わせて動画と背景を合成し、エフェクトや色調整を加えてカットの映像が作られていきます。

  • 紙(上質紙、水彩画用紙)
  • 鉛筆、消しゴム、羽ぼうき、鉛筆削り
  • 水彩絵の具
  • セルシート(透明のフィルム)
  • タップ
  • トレース台
  • タイムシート
  • 撮影台
  • 編集機

セルアニメの動画を連続させる工夫

人形アニメでは、人形を少しずつ動かしながら撮影することで、連続した絵を作っていました。しかし、紙に絵を描いていくアニメでは、同じような絵をたくさん描くという作業が発生します。ガタガタせずスムースに動くアニメを、何の工夫もなく描き出すのは並大抵のことではありません。しかも、商業アニメの場合、複数の人が協力して制作しているため、制作方法はますます重要になってきます。

まず、同じような絵をたくさん描くための道具を用意します。
「同じような絵を描く」ために、考えなければならないのは、どうしたら「同じ絵を描けるか」です。同じ絵が描けないのに同じような絵が描けるはずがありません。左にお手本を置いて、模写してもいいですが、まったく同じ絵を描くのは相当難しいでしょう。紙の下にお手本を敷いて、上から「なぞる」が最も簡単で直感的です。なぜなら、記憶や思考判断をあまり使わずに行えるからです。機械的な作業をするだけでいい。少し訓練すれば誰でもできます。しかし、かなり薄い紙を使わないと下の絵が透けません。そこで、便利な機械がトレース台です。このトレース台という機械がアニメを支えているといっても過言ではありません。もし、トレースなしでアニメを作れといったら、かなり困難な作業になるはずです。トレース台は人形アニメにおけるカメラと同じ役割を果たしているのです。

次に、「同じ絵を写す」から、「連続した動く絵を描く」という段階にステップアップしなければならないわけですが、この作業は単純な機械作業ではできません。脳内で動きを創出し、さらに絵として出力する技術も必要です。いわゆる動きのいいアニメにするためには、映像の運動に対する知識がなくては作れません。つまり素人では無理。ですから、動きを創りだす部分は熟練の人が担当し、機械的な作業を素人が担当するという作業の分担をしています。動きを創りだすのは「原画マン」、機械的に絵を描く人は「動画マン」と呼ばれています。原画マンは、きっちり描くのではなく、連続するたくさんの絵の中で重要な絵を描き、動画マンはその間を「中割り」していきます。

この作業分担のシステムが構築されたことで、アニメは高いクオリティの作品をたくさん作ることができるようになったのです。もし、アニメーターがそれぞれ担当したカットを全部一人で仕上げる仕組みだったら、カット毎にバラバラのクオリティになってしまいます。最悪な場合、キャラクターの判別ができないということにもなりかねません。それではストーリーもわからなくなります。

運動曲線だとか、タイミングだとか、良いアニメにする工夫はたくさんありますが、一番根本の重要な部分はトレース技術です。人形アニメでは、撮影技術。同じ絵を複製でき、なおかつ、少し違う絵も作れる技術があって初めてアニメは成立するのです。

少し脱線しますが、ものづくりにおいて、道具や手法は非常に重要です。これによって、創作されるもののかなり部分が決まっているといっていいと思います。人は目の前のものを感じて、それに対して反応する生物です。材料や道具に思考は大きく左右されます。もう少し大きくいうと外部環境によって、考え方や話す内容や行動は決まるのです。土砂降りの街の中と、晴天の湖畔では考え方も感情も行動も違うはずです。

 カメラワーク

アニメーションに限った話ではありませんが、映像制作において風景を切り取る(フレーミング)ことは、演出上非常に重要です。カメラの使い方によって、映像にどのような効果が生まれるのか、いくつかご紹介します。

 編集技法

カメラワークと同じく、編集によってもアニメーションや映像には、様々な効果が生まれます。

 絵コンテを作ってみましょう

絵コンテについて、簡単にお話します。アニメーション作品を視聴し、絵コンテに描き起こしてみましょう。