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アニメ・ゲーム研究-2010-09

【第9回】 アニメーション作品の内容分析

 映像作品を分析する 〜課題について〜

分析テーマの候補をいくつかリストアップするので、それらの中から選択しレポートする。

分析課題

以下の中から一つ選んでレポートすること

  1. 宮崎駿監督『風の谷のナウシカ』と『もののけ姫』の比較分析
  2. 大林宣彦監督『時をかける少女』と細田守監督『時をかける少女』の比較分析
  3. 虫プロ『ジャングル大帝』とディズニー『ライオンキング
  4. 対比して面白そうな作品を自由に2作品選んで、比較分析

レポートのポイント


  • このレポートで重要なのは、「情報を集め整理すること」と「新しい視点を与えること」の2点。

  • レポート用紙
    • 用紙サイズ:A4
    • Word等でまとめてプリントアウトが望ましいが、手書きでも可。
    • 参考画像などを見やすくレイアウトするなど工夫(書籍などのレイアウトを参考に)
    • 表紙には、分析テーマのタイトル学年クラス番号氏名など記入すること
    • ページ番号を入れ、バラバラにならないようにホッチキスなどでとめること。
  • 作品概要をまとめる
    • 分析する作品の基本情報をまとめること
    • 作品タイトル、制作年、制作会社、スタッフ構成、配給会社などなど。
    • 主要スタッフのプロフィールをまとめる。監督、原作、脚本、主演俳優などの出身地や経歴、代表作品等
  • 分析項目(例)
    • あらすじ(物語を短くまとめる)
    • 登場人物(どのようなキャラクターがでてくるのか)
    • 表現内容上の特徴について
      • テーマ(主題)やコンセプト(ねらい)などを分析する
      • 扱われている問題は何なのか、観客に興味深いと感じてもらいたい、訴えかけたいポイントは何なのか。
    • 表現手法上の特徴について
      • 映像的演出、音声的演出、登場人物の演技、編集、特殊効果、リミテッドなのかフルアニメなのか、CGを使うのか使わないのか…など。技術面や手法面で特徴的なものを分析。
    • 比較テーマの場合、二つの作品にみうけられる似ている点や異なっている点、影響を受けている点など、技術的、内容的、商業的、人間関係的に二つの作品が関係していると思われるポイントを抜き出し、分析する。もしくは、時代の変化により現れていることや、作者の環境の変化、思想的な変化など、時間を隔てて制作されていることや地域的な違いを考慮し分析する。
    • 問い」を設定し、それに対する自分なりの「回答」を書く。その「問い」がレポートのタイトルとなる。
  • 書籍、WEBページなどを参考にしても構わないが、丸写ししただけのようなものは認めません。あと何を参考にしたのかわかるように書籍名(著者名等も)やWEBページのURL(アドレス)等を記載しておくこと。

 提出について

  • 提出期限
    • 2010年7月14日(水)・21日(水)
  • 提出場所
    • 授業内で回収

 レポート作成手順について

以下、参考までに。

  1. 作品の印象: 一度通して作品を見て感じたことなどをメモしていく
  2. キーワード化: 感じたことを言葉にすることで、客観視できるようになる
  3. キーワード調査: 作品内から抜き出したキーワードの基本的な意味や、社会・歴史・文化などなどの観点から調べていく。
    • オススメの手順は百科事典で調べ、そこに書かれていることを元にさらに調査範囲を広げていく。重要だと思われるものはメモ。WebだとWikipediaやGoogleが下調べには便利。
  4. まとめ: 十分に調査したら、それらの情報をまとめていく。順位、選択、組み合わせなどを考え、自分の興味のポイントに収束させていく。分析結果を自分がどのように解釈しているのか一度客観視してみるとよい(執筆後、時間をおいて見直すなど)
  5. 問いの設定: あれ?と思ったことや、当たり前と思われていることについて逆説的な問いをぶつけてみる。
  6. 問いについての考察: 自分で考えた結論を書く。

アイデアの練り方

作品全てを漠然と分析・編集しようとすると、何を調べればいいのかわからず路頭に迷うような結果になるでしょう。ですから、切り口を定めて取り組むことを意識するとやりやすくなるのではないでしょうか。それに着眼点がハッキリしていると読み物としても面白いものになります。

何に注目して書いていくかを決めるためにも、まず作品をよく観ましょう。そしていろいろ資料を集めてみましょう。作品を作るときの基本は、いかに情報を集めるか、そしてひらめいたことや、面白いと感じたことを逃さないことです。それは、作品作りも書類作成でも同じです。情報の海からアイディアは生まれるのです。「考える」のは資料を集めてからでも遅くはありません。とにかく始めは「ひらめき」のための餌を脳に与えてあげましょう。

インターネットは調べものをするときの超強力な手段になります。かなりお手軽に必要な情報が見つかったりします。ですが、ネット上の情報はいい加減なものが多いのも事実です。インターネットと書籍を平行して使うのをオススメします。ネットで手がかりを得て書籍で追求していく、またはその逆もいいでしょう。両者をうまく活用して情報を集めてください。

十分に資料が集まったら、しっかりウンウン唸って悩んでください。インプット→アウトプット→インプット→アウトプット…の繰り返し。アウトプットをしないと、うまくインプットができないことがあります。また、インプットしないとアウトプットできないこともあります。インプットばかりしていると感じたら、無理やりにでも、インプットを避け、アウトプットすることに集中しましょう。そうやって、循環をよくすることが健全な状態を作るのではないかと思います。

感情にスポットを当てる

人は、センサーをたくさん持っています。目や耳などの感覚器もそうですし、体内にもたくさん存在していて、内蔵感覚などを常に感じているのです。これらは非常に優秀ですが、いわば機械のようなものなので、故障すると苦しむことなったりもします。

さて、人の感覚器は非常に優れた機能を持っていて、ものすごく敏感かつ素早く情報を察知します。しかし、感覚器で捉えている情報の全てを私たちは意識してはいません。ほんの一部だけが意識にあがってくるのです。人は意識と無意識とを持っています。無意識とは理性や論理思考を支える大脳新皮質に入ってこない野性的な部分です。ここは、人の生命を支えていて、私たちが心臓の鼓動を早くしろ!と考えなくても、血流量を最適にできます。感覚器から入ってくるたくさんの情報のほとんどは、無意識の方で処理されていて、私たちは気づくことすらありません。しかし、一部の情報は意識されます。

情報が意識に入るとどうなるのか。私たちは感覚で得られた情報に意味を与えようとします。それが感情です。
「胸がドキドキ【内蔵感覚】」→「それはなぜか?【意識】」→「彼が近づいている【視覚など】」→「彼が近くにいるから、胸がドキドキしているのだ【意識】」→「彼が好きなのかもしれない【意識】」
快と不快が感情の基本ですが、意識が入って複雑な思考が加わると、単純な快・不快だけでなく、感覚に意味を付け加えようとします。それらが感情です。

アニメ作品を見ていて、気持ちイイ、悲しい、楽しいと様々な感情が生まれると思うのですが、なぜ、そういう感情が生まれるのかよく考えてみてください。お話の影響なのか、画面の明るさのせいなのか、音楽のせいなのか、キャラクターの表情のせいなのか…。アニメの制作者は様々なテクニックを使って、視聴者の感情をコントロールしています。感情の揺れを生み出す原因は何かについて、考えるにはまず、自分の感情を深く見つめてみてください。

 知とは、情報と情報をつないで、情報地図を作ること

アニメ作品とは、あまり関係ない話ですが、クリエイティブな活動をしたいと考えている人は多いと思います。そういう人にとっても、調査や分析というのは大事ですよというお話です。

アイデアというのは、何もしていないところに、勝手に湧き出てくるわけではありません。いろいろ調べて情報をたくさん仕入れたり、たくさん考えたりしてあらゆる可能性を探ったり、そういう過程を経て生まれるものだと思います。それはなぜなのか。思考とは主に脳や神経系での活動を指すものだと思いますので、脳が何でできているのか、どういう仕組みで活動しているのかを考えてみましょう。

脳は神経細胞が集まってできています。ただ、たくさん集まって塊になっているわけではなくて、シナプスという道のようなもので神経細胞同士が連結しあって、網のようになっているのです。この網の中を信号が伝わり神経細胞に届くと、スイッチがはいるようになってるんですね。スイッチが入ると、信号を発信して、隣の細胞のスイッチが入ります。そうやって、シナプスでつながった細胞にスイッチが入っていきます。

ここからわかるのは、脳というのはネットワークであること、複雑なネットワークが知を作りだしているのです。しかし、基本ルールは単純で、道(シナプス)を伝わって信号が細胞で作られた網の中を伝わっているだけです。単純なルールなんだけども、網の構造はものすごく複雑にできています。この複雑なネットワークが私たちの知を作り出しているのでしょう。私たちの脳は日々たくさんの情報を取り込んで、複雑に進化し続けています。複雑に成長すれば、一つの情報を得たときに、様々な情報とつながりができていくのです。しかし、ただ情報がたくさんあるだけだと散漫になり、「意味」が曖昧になっていきます。そこで、似たような情報を「まとめ」たり、「順番」をつくったり、関連性を考慮した「配置」したりすることで、情報を整理することが有効です。整理すると、また違った発見が生まれたりします。

この情報を整理するということを違った見方でいうと、「情報地図をつくる」ということなのではないでしょうか。地図は、上空からの違った視点を与えてくれます。場所と場所の関係や距離がよくわかったり、近道を簡単に見つけられたり、気付かなかった場所を知らせてくれたりします。

そうやって、散漫だった情報が、自分の中で体系化(地図化)されると、すごくスッキリするんです。ああ、そうか!という喜び。それが、創作的思考のひとつなのではないのかなと思います。


今、この段落で書いた「知」と「情報の地図」という喩えを出しましたけど、この二つの言葉は本来関係のない言葉です。しかし、結びつけることによって、発見が生まれます。新しい関係性を作ること。それが知を生み出すこと、クリエイションということなのではないでしょうか。


もの調べをするときに便利なWEBサイト

調べものをするときに個人的によく利用するサイトを紹介しておきます。