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映像基礎演習-第4回-2008

映像基礎演習 第4回 映画創生史2 [2008年度]


 1920年代の映画(海外)

現在の映画のスタイルが形成されていった時代。産業として定着し、芸術としても確立し、様々な映画独特の理論・技法が編み出されていった。

  • アメリカ…サイレント喜劇映画、リアリズム
  • フランス…アヴァンギャルド
  • ドイツ…表現主義、絶対映画
  • ソビエト(現ロシア)…モンタージュ理論

 アメリカ

サイレント映画
せりふや音声が収録されていない映画のこと。無声映画とも。1927年に世界初のトーキー映画「ジャズ・シンガー」が出現するまでは、当然のことに映画はすべて無声であった。音声がないという制約から様々な映画的テクニックが開発され、それは現代の映画にも引き継がれている。登場人物のせりふは字幕を挿入することで表現したが、俳優の演技は大袈裟なものにならざるを得なかった。Wikipedia

サイレント喜劇
産業社会における人間と機械の問題や権力政治における政治的な問題をスラップスティック映画(ドタバタやパントマイムでの身体表現)として表現した。チャップリン、キートン、ロイドが「世界の三大喜劇王」と呼ばれる。
  • チャーリー・チャップリン (Sir Charles "Charlie" Spencer Chaplin) Wikipedia
  • バスター・キートン (Buster Keaton) Wikipedia
  • ハロルド・ロイド (Harold Clayton Lloyd) Wikipedia

『キートンのマイホーム One Week』(1920)  バスター・キートン(アメリカ)

『キッド The Kid』(1921) チャーリー・チャップリン(アメリカ)

『要心無用 Safty Last!』(1923) ハロルド・ロイド(アメリカ)

リアリズム
伝達機能におけるカメラの可能性を追求し、創作者と協力して作品に参加する自由を鑑賞者に与える必要性を訴え、その後のアメリカに影響を及ぼす。
  • エーリッヒ・フォン・シュトロハイム (Erich Von Stroheim) Wikipedia

『結婚行進曲 The Wedding March』(1928) エーリッヒ・フォン・シュトロハイム(アメリカ)

ジャス・シンガー ポスター

  • 『ジャズ・シンガー The Jazz Singer』(1927) アラン・クロスランド(アメリカ)

 フランス

アヴァンギャルド(avant-garde)
既成の概念や流派を否定・破壊し、新しいものを作ろうという、第一次世界大戦後、ヨーロッパで興った芸術運動。主に抽象主義、シュルレアリスムに対して用いられた。Wikipedia

様々な芸術活動がこの思想に影響を受ける中、映画の世界では、映画の中から他のあらゆる表現手段の利用を排除するという原則が打ち立てられた。「カメラは生きた現実の素材を、直接、芸術的に映像化しなければならない。小説や劇の中に主題を求めるべきではなく、直接、目に見える存在の中に主題を探るべきだ。」 この考えから主に2つの方向に発展する。 

  1. ドキュメンタリー映画(ありのままの事実の表現、無形式の対象を見せる)
  2. 無内容な形式の連鎖(純粋な形象の表現、無対象の形式を見せる)→フォトジェニー、純粋映画、シュルレアリスム

フォトジェニー(photogenie)
サイレント映画時代によく使われた言葉で、カメラのレンズを通すことによって被写体の本質が捉えられるという考え。フォト(写真)、ジェニー(精霊)。映画は映像によるオーケストラであり、眼に訴えかける音楽であり、内的な生命に働きかける。
  • アベル・ガンス (Abel Gance) Wikipedia
    • 『鉄路の白薔薇 La Roue』 (1923) フォトジェニーの代表作
    • 『ナポレオン Napoleon』 (1927) 3面マルチプロジェクション<トリプル・エクラン>

『ナポレオン Napoleon』 (1927)

純粋映画(cinema pur)
ストーリーや論理の一切を解体し、意味の錯乱をリズムの連鎖で感覚的に統合する。イメージを奇想天外に展開し、非意味化のプロセスを体験させる。
  • ルネ・クレール Wikipedia
    • 『幕間 Entr'acte』 (1924)
  • フェルナン・レジェ Wikipedia
    • 『バレエ・メカニック Ballet Mechanique』(1924)

『幕間 Entr'acte』 (1924)

『バレエ・メカニック Ballet Mechanique』(1924)

シュルレアリスム(Surre'alisme)
超現実主義。超現実とは「現実を超越した非現実」という意味に誤解されがちであるが、実際は「ものすごく過剰なまでに現実」というような意味。心理の自動現象をとらえるオートマティスム(自動筆記)を唱え、夢や無意識や非合理の世界を解放することにより、日常的な現象を超える精神の自由を実現しようとした。
  • ルイス・ブニュエル(Luis Bunuel) Wikipedia
    • 『アンダルシアの犬 Un chien andalou』(1928) Wikipedia
      • 監督・製作:ルイス・ブニュエル
      • 脚本:ルイス・ブニュエル、サルバドール・ダリ
      • 冒頭の剃刀で眼球(実際は牛の眼球)を真二つにされる女のシーンに始まり、脈絡のない衝撃的イメージ映像が断片的に描かれる。
    • 『黄金時代』(1930)
  • マン・レイ(Man Ray) Wikipedia
    • 『ひとで L'Etoile de Mer』(1928)
  • ジュルメーヌ・デュラック
    • 『貝塚と僧侶』(1927)

『黄金時代』(1930)

『ひとで L'Etoile de Mer』(1928)

 ドイツ

ドイツ表現主義(Expressionism)
表現主義(ひょうげんしゅぎ)または表現派(ひょうげんは)とは、様々な芸術分野(絵画、文学、映像、建築など)において、一般に、感情を作品中に反映させ、現実をねじまげて表現する傾向のことを指す。また、この語は感情の中でも特に不安や葛藤などをあらわしたものを指すことが多い(表現主義の作品で、陽気で快活なものはあまり見れず、陰鬱なものが多い)。表現主義:Wikipedia

  • ロベルト・ヴィーネ
    • 『カリガリ博士 Das Cabinet des Dr. Caligari』(1919)
      • ドイツ表現主義の映画作品の中で最も古く、最も影響力があり、なおかつ、最も芸術的に評価の高い作品。Wikipedia
  • フリードリッヒ・ヴィルヘルム・ムルナウ(Friedrich Wilhelm Murnau) Wikipedia
    • 『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922)Wikipedia
  • フリッツ・ラング Wikipedia
    • 『メトロポリス』(1926) Wikipedia
      • 製作時から100年後のディストピア未来都市を描いたこの映画は、以降多数のSF作品に多大な影響を与え、世界初のSF映画とされる『月世界旅行』が示した「映画におけるサイエンス・フィクション」の可能性を飛躍的に向上させたSF映画黎明期の傑作とされている。

『カリガリ博士 Das Cabinet des Dr. Caligari』(1919)

『メトロポリス』(1926)

絶対映画
一切の文学的、演劇的要素を排除して、抽象化された内面そのものを視覚的に表現する。ダダイストの抽象画の世界を音楽的に動かそうという発想から生まれた。

  • ハンス・リヒター(Hans Richter) Wikipedia
    • 『リズム21 Rhythmus 21』(1921)
      • 絶対映画の代表作。アブストラクト・アニメーション。音楽の映像化。
    • 『午後の幽霊 Vormittagsspuk』(1928)
  • ヴァイキング・エッゲリング(Viking Eggeling)
    • 『対角線交響曲 Symphonie Diagonale』(1924)
  • オオスカー・フィッシンガー(Oskar Fischinger) 連URL
    • 『習作1〜14』(1929〜1933)
      • 当時実用化されつつあったトーキー・システムを使い、音楽と抽象的な映像(画用紙に木炭で作画)をシンクロさせたアニメーション・フィルム。

『リズム21 Rhythmus 21』(1921) ハンス・リヒター(ドイツ)

『午後の幽霊 Vormittagsspuk』(1928)1 ハンス・リヒター(ドイツ)

『対角線交響曲 Symphonie Diagonale』(1924) ヴァイキング・エッゲリング(ドイツ)

 ソビエト

モンタージュ理論
ソビエトでは映画の発明直後から映画作りが始められ、ロシア革命以後、国家レベルで映画が製作されるようになっていた。アメリカのグリフィスによって生み出されたモンタージュの技法は、ソビエトにおいてヴェルトフの追求したカメラの記録性と、クレショフの実験したモンタージュの可能性とが結びつき、さらにエイゼンシュタインが発展させていった。その最高の実践例として『戦艦ポチョムキン』(1925)が作られた。エイゼンシュタインは異なる意味を持つ複数のショットを結合させることによって、どのショットにもないような意味を弁証法的に作り上げた。エイゼンシュタインの実践は映画芸術史の上での重要な教典となった。参考1参考2参考3参考4

  • セルゲイ・エイゼンシュタイン(Sergei Mikhailovich Eisenstein) Wikipedia
    • 『戦艦ポチョムキン』(1925) Wikipedia
      • 1904年に黒海で反乱を起こした戦艦ポチョムキンとその船員達を描いた映画史上屈指の名作。もっとも有名なのは反乱を支持しデモ行進をしていた民衆を、コサック兵が虐殺する「オデッサの階段」のシーンである。モンタージュ理論を確立させた作品として有名。
  • ジガ・ヴェルトフ Wikipedia
    • 『カメラを持った男』(1929年)
      • 文学性や演劇性を削ぎ落とし、カメラに移る現実のみによって再構成しようとするドキュメンタリー映画。多重露光、ストップ・モーション、スロー・モーション、早回し、移動撮影など当時の最先端の撮影技法を多用した先鋭的な作品。

『戦艦ポチョムキン』(1925)

『カメラを持った男』(1929年)

 次回演習「映像作品の形式分析」のための準備

エジソン、リュミエールらによって始まり、グリフィスが映画の文法を確立し、エイゼンシュタインらがその映画の文法を高度に発展させてきた。そして、現在にいたるまで、映画のための様々な理論や技法が編み出されてきている。次回の演習において行う「映画作品の形式分析」では、どのように映画作品が構成されているのかを学んでもらう予定だが、事前に基本的な知識を予習しておきたい。(配布資料を参考)

  • シナリオ
  • 絵コンテ(イメージボード)
  • カメラワーク
  • 編集技法

etc.

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 参考文献


【書籍】映画検定 公式テキストブック キネマ旬報社

【書籍】「逆引き」世界映画史! フィルムアート社

【書籍】CG&映像しくみ辞典 ワークスコーポレーション

【DVD】映画の宝物 シネマヨーロッパ

【DVD】20世紀の巨人 映像とイメージ