トップ 差分 一覧 Farm ソース 検索 ヘルプ RSS ログイン

CG演習2-第5回-2008

キャラクター作成について考えてみる

ストーリーの考え方として、まず先にキャラクターを考えてみるというものがあります。マンガやアニメ、ライトノベルなどはこの部類に属しているものが多いです。特に週刊連載のマンガなどはほぼ全てこの作り方で制作されています。

 魅力的なキャラクターの生きざまが魅力的な物語である

僕たちは、現実世界の人生を歩んでいますが、自分の物語の行く末を知っているわけではありません。僕たちの人生が物語だとするならば、僕たちが生きてきた後に物語が残るわけです。この考え方を、創作物の物語に適用するならば、作品内のキャラクターたちが生きた軌跡が物語だといえます。つまり、あらかじめ作られた物語をキャラクターが生きるのではなく、キャラクターが自由に行動すれば、自動的に物語も生まれるわけです。魅力的なキャラクターの人生は魅力的で面白い物語になる可能性も高いだろうということですね。

 キャラクターをつくる

キャラクターのネタの考え方も第3回で述べたような方法で作っていただければいいと思いますが、いくつか勘どころがあります。

  • 職業をきめる
  • 生い立ちをきめる
  • 外見的に特徴がある
  • 外見的な特徴は内面と関係がある
  • 外見的な特徴は物語内の謎と関係がある
  • 弱点がある(弱点は大きいほどよい)
  • 弱点は長所にもなっている
  • 過去の出来事が現在の状況に影響している
  • なさけない(困った)やつである

他にもあるかもしれませんが、この辺のことが決まってくると、そのキャラクターのイメージがかなりハッキリすると思います。そして、他に登場人物がいる場合、上のいくつかの点と何らかの関係を持たせるとよいと思います。反対の特徴でもいいし、補助する形でもよいです。職業は、自分たちにとってあまり身近なものじゃない方がやりやすいかもしれません。身近なものは、どうしてもディテールが必要になってくるからです。かといって、全く知らない職業は書けないのでだめです。学生やサラリーマンや主婦などは、カテゴリーが広すぎますので、副業のようなものを考えるか、その仕事を詳しく設定する必要があるでしょう。

性格についてなんですが、カッコイイだけのキャラクターは扱いが難しいです。かっこ悪い方が使いやすいです。完璧な弱点の無い人もやめた方がよいです。弱点を描くことで人間らしさや親近感をもつことができます。カッコいいキャラクターの中に実はこんなかっこわるい部分があるんだ、というのを書くとか、自分がものすごくかっこわるいので、なんとかカッコよく見せようとしてるとか。カッコよくて強いだけのヒーロー(ヒロイン)は、売れません。脇役のやられ役とかにはいいかもしれませんけれども。

性格についてですが、よくこのキャラクターはやさしい性格です、とかいう人がいるんですが、それでは幅が広すぎて性格を決めたことにならないです。どんな人でも、やさしい心を持っているものなのです。もう少し、具体的に行動に表せるような特徴が必要です。たとえば、ナウシカのように蟲や他人のために自分の命を投げ出せるほどやさしいとか、子供でも顔色ひとつ変えずに殺してしまうほど残虐だ、とかです。言い換えるならば、性格っていうのは「どの行動を選ぶ確率が高いか」ともいえるかもしれません。この人はこんな行動をするんですよ、という具体的なイメージが重要です。毎日、近所のゴミを拾いあつめながら登校するようなキレイ好きだ、とか。行動が伴わないと絵になりませんよね。イメージが浮かぶ具体的な行動を考えるとキャラクターが見えてくると思います。

 キャラクターが動き始める

そうしてできたキャラクターを動かすのですが、放っておいても最初は動きません。前回もバランスが崩れることが物語のきっかけだと言いましたが、そのキャラクターが活動し始める何か、壁なり罠なりライバルなり恋人なり…主人公を悩ませたり困らせたりする何かをぶつけるか、もしくはそのキャラクターから何かを奪いましょう。命でも宝物でも何でもいいです。バランスのとれた状態を崩すきっかけを与えてください。キャラクターは苦しめた方が話は作りやすいですが、苦しみの度合は作品性にモロに影響するので、作ろうとしている作品性がおかしくなるほど苦しめてしまうと視聴者は逃げてしまうかもしれません。苦楽のバランスが大事ですね。男の子が庭の盆栽を割ってしまったことをお父さんに内緒にしているのも苦しみですし、あと1か月の命ですと医者に宣告されてしまうことも苦しみです。受験も告白するか悩むのも苦しみですよね。

 キャラクターの変化

人間は日常の様々な出来事を経験し、常に変化しています。どんなに変化したくなくても変化します。生きているとは変化しているといってもいいのかもしれません。何かを見たり、何かを聞いたり、何かを考えたり、または忘れたりすることで、脳内の脳神経は結合を強めたり、弱めたりします。体だって成長したりするのです。髪の毛や爪は伸び続けています。思考性や性格や能力も常に変化しています。

これは、キャラクターにも当てはまるのではないでしょうか。様々な経験をしたり、脇役たちから影響を受けて変化していく。何かを失い、または何か困ったことがおき、行動せざるをえなくなったキャラクターたちは、最終的にそれらを解決するだけではなく、何かを得ているはずです。もしくは、何かを失っているはずです。多くの作品の主人公は、物語が進むにつれて成長します。主人公に感情移入している視聴者は、自分の分身のようにみている主人公が成長していく姿をうれしく思うのです。

「物語の最初と最後で何が変化したのか」は、作品性にとってとても重要な要素のひとつだと思います。書き始める前に考えてできるようなものではないかもしれませんが、物語を書き進める上で、この点から見直してみると制作の指針になることもあるでしょう。

ストーリーの考え方

 面白いネタを探す

「これは面白いな!」もしくは「面白くなりそう」と思うネタを探します。

これがうまくいかないとかなり苦労します。悩んでる学生でよくあるのが、すごく漠然とした抽象的な言葉を頭の中だけで思い描いてるような状態です。うまくいかない人に「なんかこう、こんな感じ?」っていう人がすごく多いです。具体性が無さ過ぎるんですね。

頭の中でモヤモヤ考えてるだけではなかなかイメージはまとまらないものです。積極的にネタを探すようにしましょう。テレビで見たことでも日常で気になっていることでも何でもいいですが、何か気になる、もしくは、面白いと思う事柄をメモしてください。メモはどれだけしてもいいです。見つけたことや思い浮かんだことをメモしまくります。アイディアはなかなか向こうからやってきてくれません。好きになるように自分を仕向けましょう。違う言葉でいうと「好奇心」ですね。自分から捕まえにいく姿勢が重要です。

アイディアを文字にしてビジュアル化するだけでも、脳の思考能力は飛躍的に高まります。更に、作品のことを人に話すと、わかってもらおうという脳内スイッチが入るのでものすごく脳が働きだします。友達と物語のネタを話してるうちにストーリーが一本まるごと出来上がったっていうことはよくあることだと思います。ただ、興奮状態で考えたものは一晩寝かして見直す方がいいです。あと、散歩やサイクリングしたり、図書館や喫茶店などで考えたり、お風呂で考えたりするのも有効です。

本、雑誌、テレビ、ニュース、映画、歌詞、願望・忌避、友達の話、町でみかけた風景…なんでもいいですが、様々なものから情報収集しては、それをメモし、考える。そうしているうちに何か形が見えてくるはずです。

先週の話に出てきたと思いますが、作品とは何かの切り口です。一見面白くなさそうなネタでも切り方によっては、面白い断面が見えてきます。いろんな角度から眺めるようにしましょう。

 ネタを作る

いろいろ考えたり、探したりして出来てきた大量のネタを見直します。その中から光るネタを探し出しましょう。そのときに、他のアイディアとくっつけてみたり、入れ替えてみたり、逆転させてみたり、対の言葉やシチュエーションを考えてみたり、極端にしてみたり、視点を変えてみたり…と様々な可能性を探ってください。「おっ!?」と思うネタが出来上がったら、それはかなり面白くなる可能性があると思います。

ネタいじり用キーワード
切り口 共感 意外性 刺激 社会性
美しさ オリジナリティ 欠落と補完 タイミング・場所・目的
需要と供給 ギブ&テイク 比較 異質なものをくっつける エスカレートさせる
裏切る 勘違い すり替える 凝縮と解放 対になるものを考える
連続性 統一感 リズム バランス 主観と客観
視点を変える 擬人化 第三者の存在 表と裏 密度

 物語化する

面白いネタができたら、物語化しましょう。というか、この時点ですでに物語ができてしまってる場合も多いんじゃないでしょうか。その場合もいろいろ検証するつもりで考え直す方がいいと思います。

どこで切り取るか

大前提として物語は、始まりがあって終わりがあります。ずっと連続して続いている時間のある一部分を切り取ったものが物語です。どこで切り取るのが一番いいか考えるのも重要です。いらない部分がないか、もっと必要な部分がないか考えましょう。

物語の恒常性

ものすごく単純に言うと物語は、誰かが何かを求めて行動したことを記したものです。

何かを求めるということは、何かが足りないということです。もしくは、バランスが崩れている状態を元に戻そうとすることです。その崩れたバランスを元に戻すために、主人公たちは思考し行動します。主人公が善人でも悪人でも個人でも組織でもその原理は変わりません。

この基本的な仕組みがないと、視聴者は見ていて不安になるんですね。この主人公はなぜ行動してるんだろう、それを手に入れたからどうだっていうの??と、何か落ち着かない感じになります。

  • うさぎ君は、台風でものすごい風と雨の中を、全身傷だらけになりながら八百屋に向かった。
  • うさぎ君は、倒れた妹うさぎに新鮮なニンジンジュースを飲ませてあげるために、台風でものすごい風と雨の中を、全身傷だらけになりながら八百屋に向かった。

このふたつを映像化してみたときのことを考えてみてください。ものすごい嵐の中を必死にピョンピョン跳ねるうさぎの姿がイメージできますが、あきらかに下の方が盛り上がりますよね。妹のくだりをはじめに出すか、後に出すかでも印象は変わります。

学生作品で面白くない作品はこの要素がないものが多いです。「だから何?」といいたくなってしまうのです。ただ車が走ってるだけ、ただ格闘してるだけ。「ただ○○してるだけ」の作品で面白くするのはなかなか難しいです。何かの操作説明とか、機能説明みたいなものや、自分の技術レベルを見せるためなどの映像としては、アリかもしれませんけど、大体のものは見ているうちに眠くなります。

ちなみに、映像作品がすべて明確な物語を持っていなければ面白くないかというと、そんなことは無いと思います。映像作品は時間性を持っているため広い意味では、すべて物語性があるともいえますが、一般的な意味での物語がある必要はないです。ネタが最高に面白ければ、物語らしい物語がある必要はないでしょう。記録性の問題もありますし、風景として意味がある映像やその映像から想像が豊かに膨らむ映像は無闇に物語性を入れない方が良い場合が多いでしょうね。

構成を考える

そして構成を考えましょう。よく言われるのが「起承転結」ですね。
起承転結の4部構成はものすごく有名で、もう誰でも知ってます。誰でも知ってるけど、実際作ると難しい。起承転結は順番をある程度いじることが可能です。ラストを最初に見せて、なぜそうなったのかを見せていく構成もよくあります。

映像作品としての物語

CGクラスで作るものは、ほとんどの人が映像作品ですので書いておきます。

映像作品のための物語だということをよく考えてください。おそらく皆さんが学内にいる間に作るものは短編作品です。アニメーション作品であればなおさらですが、あまり時間の長い作品は作れないでしょう。ですから、あまり複雑な話は向いていません。物語的にはシンプルな構成で考えて、絵の力と演出で見せていくのが無難です。書いている物語が長くなっていないか、考えてみてください。

登場人物を特殊な状況に放り込め

話題を変えて、ストーリーの作り方の話です。前回、授業内で触れられませんでしたが、キャラクターが物語をつくるという例を出しました。今回は、世界観・状況の設定についてです。

 もし〜だったら?で考える

長編でも同じことがいえますが、特に短編アニメーションの場合、登場人物を特殊な状況に放り込むという手法はものすごく有効です。実際にはありえないルールを設定してみたり、現実にはいない生物をだしたり、非現実的な状況に登場人物を置くことで面白いお話を作りやすくなります。マンガやアニメには特に多いので、少し思い返せばいくらでも例が見つかるでしょう。

考え方として有効な一つの例は「もし、○○だったら…?」というIfの世界の提案です。

  • もし、宇宙に自由に行くことができたら?
  • もし、人類全員が子供だけだったら?
  • もし、学校だけが白亜紀の世界へタイムスリップしたら?
  • もし、世界全体の女の子からモテモテだったら?
  • もし、お金が無限に沸いてくる財布を拾ったら?
  • もし、ゴムのように伸びる体を持っていたら?
  • もし、本の世界に入れたら?
  • もし、人類全員がウルトラマンだったら?
  • もし、体がポリゴンでできていたら?
  • もし、自分がもう一人いたら?
  • もし、他人と同じ夢を共有していたら?

などなど、いくらでも考えられますが、面白い話が作れそうな気がしませんか? 何かテーマがあって、そのテーマを表現するのに最適な「もし〜?」を考えてもいいし、面白い「もし〜?」を先に考えてそこから、テーマになりそうなものを見つけ出していってもいいでしょう。もしかすると、「もし〜?」自体がテーマになっているかもしれませんね。

<脱線>
少し脱線しますが、この「?」というのが結構重要なんです。これは自分自身へ、視聴者へ問いかけること。問われれば答えねばという思考が働くでしょう?どうですか?何か心の中で「そうだなぁ」とか「そんなことねぇよ!」と何か答えを言っているはずです。自分自身へ問いかけること、これは創作の根本にまつわる事項です。
</脱線>

物語の作り方で、短編向きだなと個人的に考えているのは、状況を極端にエスカレートさせることです。中途半端に変なものより、ものすごく変な方が興味を惹かれます。常軌を逸している世界と凡人が同居することで面白い状況が生まれます。もしくは、平凡な世界に超人が入り込むことです。

マンガの場合、かなり常軌を逸しているものが登場しますが、登場人物すべてが超人ではその凄さがいまいち伝わりません。感情移入もしにくいですし、比較対象がいなければどれだけ凄いか表現できないのです。以前にもお話したと思いますが、人間は相対的に物事をみる生物です。そこで、凡人の登場です。脇役でも構いません。視聴者と同レベルかそれ以下の人がいなければならないのです。例外的に、全員が逝っちゃってる場合もありますが、そのときは基本的に視聴者置いてけぼり上等というわけです。見てるほうはポカーンという感じになりますが、その置いてけぼり感がイイということもあるかもしれません。

何かと何かを入れ替えるというのもいい考え方です。よくある例としては、「もし、男が女の体になったら?」とか、「もし、親と子供が入れ替わったら?」とか、「もし、正義と悪がひっくり返ったら?」など、立場や状況がひっくり返ることで、面白い状況が生まれます。

好きなマンガや小説などをこの「もし、〜〜だったら」に当てはめて考えてみてください。そうすると、物語の大きな枠組みが見えてくるでしょう。長期連載ものの場合、スタート時は必ずしもラストが設定されているわけではありません。面白い状況設定、面白い登場人物を作り、それらがその世界の中で暴れると面白くなりそうだ、という期待感が書き手を刺激するわけですし、視聴者もワクワクするわけです。

 仮定から具体的にしていく

「もし、男が女に変わったら?」からどのような話が生まれるかは、無限の可能性があり、特定できません。恋愛についても語れるだろうし、男社会と女社会を評論するような内容でも作れるでしょう。そこで、「もし、男が女に変わったら?」と「恋愛」というテーマをくっつけてみます。そうすると、書きたい内容はかなり明確になってきます。どうして、女になってしまったのか、身体的に女になったのか精神的に女になったのか、主人公は何歳くらいか、職業は何か、どんな時代か、男に惚れるのか女に惚れるのかなどなど、いろいろ具体的になってきます。それらが設定です。

世界観、設定、テーマが決まれば、あとは書くだけです。そのために資料が必要なこともあるでしょう。以前お話したように、世界や人物のバランスが崩れたり、何かが欠けることによって、それを回復しようという動きが起こります。その動きに従って書き進めていけば物語は書かれていくと思います。山あり谷ありで視聴者をひっぱり、行き着くところへ導いてください。

 特異な状況を発生させる

上の部分と重複する話でもあるのですが、登場人物の目の前に平凡な世界から離脱させてしまうような特異な状況を発生させるのは、短編向きで良い方法です。

  • 目の前に死人が転がっている
  • 目の前に爆弾が転がっている
  • 目の前にワープトンネルが発生する
  • 目の前に底なしの穴が開いている
  • 目の前に幽霊が現れる
  • 目の前に宇宙人が現れる
  • 目の前に拳銃が転がっている
  • 目の前に核爆弾のスイッチがある
  • 目の前に金塊が積まれている
  • 目の前に裸の女(男)が立っている

などなど、僕たちの日常世界ではお目にかかれない特殊な状況を用意してあげるわけです。そこで登場人物がどういう反応をするのか。登場人物が2〜3人くらいなら、コントなどが作れそうです。提示するものは人間の欲望を刺激するものが良いでしょう。金、権力、食、性などは、誰でもが持つ欲望でお話にしやすい材料になるでしょう。人の願望や絶対に起こってほしくないことが目の前に提示されるとなんらかのアクションが生まれるはずです。不条理系にしたいときは、状況設定や登場人物の設定をさらにありえない方にもっていく必要があるかもしれません。

 いい絵をつくれ

上の手法で考えるときに、面白い絵だなぁ、美しい絵だなぁ、カッコイイ絵だなぁと思える絵が浮かべられるものを考えてください。いい絵が作れそうにないテーマは映像には向いていないかもしれません。もしくは、現在の自分には手におえないテーマなのかもしれません。イメージできないというのは、自分の想像力が追いついていないという可能性があります。はじめはイメージできなくても、資料を集めて、イメージを形作っていくというのも有効です。実際にどんどんスケッチを描いて模索していきましょう。いい絵が一つもない映像作品なんて面白くもなんともないでしょう?黒澤明監督は、映画はすべてのカットがいい絵になっていなくてはならないと言っていたそうですよ。

 葛藤させろ

登場人物、特に主人公には葛藤させましょう。ドラマとは葛藤を描くことだといってもいいのかもしれません。悩み、苦しみ、もがいてそれを克服していく。葛藤し…克服したーと思ったら、次の葛藤があらわれる。その波が視聴者を引き込んでいくんです。葛藤にはレベルがあり、作品全体を貫く葛藤と、比較的簡単に克服できる葛藤があります。

葛藤を与えるために、主人公を悩ませ苦しめる状況やライバルや脇役たちがいます。悩ませる相手は悪者やライバルだけではありません。いい人も恋人も両親も、あの手この手で主人公を苦しめます。恋人に自分には買えそうに無い高級品をおねだりされたり、両親に立派な医者になってくれと期待されるのも葛藤の原因になります。

 表現媒体に特化させる

どのような手法で作品をつくるのかを考慮することも重要です。手書きのアニメーションなのか3DCGのアニメーションなのか、実写映像なのか、ゲームなのか、小説なのか、マンガなのか…などなど、表現する手法やメディアにあった、もしくはその手法やメディアならではのアイデアを入れていきたところです。手描きイラストでしか表現の難しいこと、3DCGだからこそ実現可能なこと、それらを上手く加味していくことで面白さは何倍にもなるでしょう。表現に見合った技術を組み合わせるのも有効な手段です。イラスト、CG、人形、写真、ビデオなどなど、大学のカリキュラムで教えられたものもそうじゃないものもあるでしょうが、面白いと思う技術をうまく使っていきましょう。これ実写でやればいいんじゃないの、って言われるアニメーション作品は企画段階で何か足りないのです。

 テーマを主人公に言わせるな

実際に書いていくときに、シナリオや台詞の中にテーマを書いてしまわないようにしましょう。テーマは、映像でみせるというか読み取ってもらうのであって、直接言ってしまったら興醒めもいいとこです。というか、もし言葉で言い表してしまったら、映像はいらんじゃないか、ということになります。気をつけてください。

「もし、男が女の体になったら?」という状況設定、「恋愛」というテーマで書いていて、その話で語りたい内容が、「男と女は永遠にわかりえないし、愛情も一方的な気持ちの押し付けなのかもしれないが、それでも異性を愛することを止められない」というメッセージ性を持つものだとして、そのことを主人公がしゃべってしまったり、ナレーションで言ってしまってはどうしようもないものになってしまいます。作品内の主人公の行動や、カットの並び、お話の進行によって汲み取れなければなりません。