!!!【第2回】絵が動くしくみ・映像玩具 !!なぜ、絵が動いて見えるのか アニメやテレビゲームでは、絵や写真や記号や文字などを画面上で動かすことによって、作品を演出しています。一般的に「アニメーション」「映像」「動画」と呼ばれるこれらの技術についてお話します。 !!視覚の働き !カメラと視覚の違い 人は目によって風景を「見る」ことができます。この「見る」という仕組みをまずは理解してください。ここでは、人間の見る仕組みによく似た機械の例として、カメラを取り上げ、それとの比較によって、考えを深めていきたいと思います。 ,【カメラ】,光(風景),→,レンズ,→,シャッター,→,フィルム(CCD),→,プリント(画像処理),→,写真(画像データ) ,【視覚】,光(風景),→,角膜,→,虹彩,→,網膜,→,脳(知覚),→,映像 カメラと視覚の仕組みは非常によく似ています。デジタルカメラになってからは、さらに似てきました。その似てきたのはどこかというと、「プリント(画像処理)、脳(知覚)」の部分です。アナログ写真だった頃は、この画像処理に当たる部分は、人が操作して写真に焼き付けていたので、人の操作が加わっていたのです。もちろん、デジタルになってからも、カメラを操作するのは人ですが、一度プログラムしてしまえばカメラ単体でも機能します。 カメラと視覚は似てはいますが、やはり全くの別物といってもいいでしょう。それは何故か。視覚とは、「固定されたデータ」ではないからです。視覚情報とは記録ではありません。見た風景を「解釈」し、「取捨選択」し、「意味」を生じさせます。目から入った風景をありのまま知覚しているのではないのです。人は風景を無意識にねじ曲げます。そこが、機械としてのカメラと人の視覚機能の大きな差です。目だけを取ってみれば、それほど大きな差はありませんが、視覚には脳が介在しているのです。脳は意識に上らないレベル(無意識)で情報操作します。 話が少しそれますが、見た風景をそっくりそのままに絵に描けない人が多いのは、視覚のシステムに脳が大きく介入しているためなんです。人の姿などは非常に大きく歪めて認識してしまいます。そっくりに描こうと思っても頭や目を必要以上に大きく描いてしまったりする人が多いはずです。これらはトレーニングすることで、改善することができます。しかし、良い絵と正確な風景の絵は必ずしも同じではありません。目で見て感じた風景はその人にとっての正しい風景です。 !仮現運動 人間の目には無意識に欠けているものや隠れているものを補完、完結した形で認識する機能が備わっています。さらにある程度の速度の動きを残像として目に焼き付けます。この2つを応用したものが動画の原理である仮現運動です。 :視神経の補完機能:左の絵だけを見せられたとき、人間の目は単純に「羽が欠けている」と捉えるのではなく、鳥の羽が「本来はつながっていて、それが隠されている」と認識します。無意識下で右のように完結した絵を想像しているのです。 {{image eizokisoen-no1-01.jpg,映像基礎演習-第1回-2009,alt:視神経の補完機能}} :残像現象:ゾーマトロープと呼ばれる残像効果を利用したおもちゃはアニメーションの原点といえるでしょう。片面に鳥、その反対に鳥かごが描かれたパネルを高速で回転させるとかごの中に鳥が入っているように見えます。 {{image eizokisoen-no1-02.jpg,映像基礎演習-第1回-2009,alt:残像現象}}{{image eizokisoen-no1-02b.gif,映像基礎演習-第1回-2009,alt:ゾーマトロープ}} 上の2つを応用したものがアニメーション(動画)です。左のイラストと右のイラストを高速で動かすと残像現象と左右の間にあるものを補完しようとする視神経の働きで、中央には羽ばたいている途中の鳥がみえるのです。 {{image eizokisoen-no1-03.jpg,映像基礎演習-第1回-2009,alt:アニメーションの原理}} !絵が動いて見えるための条件 絵が動いて見えるためには'''切り替えの速度'''と'''絵の連続性'''が求められます。絵の切り替え速度は最低でも0.1秒以下でなくてはならず、それより遅いと動きではなく点滅として認知されるのです。また、0.02秒より早い速度で切り替わると人間の目では知覚できなくなり、さらに複数の静止画が動画として認識されるには、それらが一連の動きを細かく切り取ったものでなくてはなりません。当然のことですが、バラバラの絵が高速で切り替わっても動き(運動)として認知されることはありません。 +切り替え速度が遅い例 {{image eizokisoen-no1-04a.gif,映像基礎演習-第1回-2009,alt:切り替え速度が遅い例}} +切り替え速度が早い例 {{image eizokisoen-no1-04b.gif,映像基礎演習-第1回-2009,alt:切り替え速度が早い例}} +切り替わる順番が適切な例 {{image eizokisoen-no1-05a.gif,映像基礎演習-第1回-2009,alt:切り替わる順番が適切な例}} +切り替わる順番がバラバラな例 {{image eizokisoen-no1-05b.gif,映像基礎演習-第1回-2009,alt:切り替わる順番がバラバラな例}} !!初期の映像装置 !フェナキスティスコープ ヘリオシネグラフ(おどろき盤) :フェナキスティスコープ PHENAKISTI-SCOPE:残像現象の研究者J.A.Eプラトー(ベルギー)が1832年に考案。翌年ロンドンで玩具として販売。連続画を描いた円盤にスリットを開け、鏡に向かって回転させながら裏側から覗くと絵が動いて見える。 :ヘリオシネグラフ HELIOCINEGRAPH:1850年以降、フェナキスティスコープにシャッターの役目をはたす円盤をもう一枚追加することで鏡を使わずにアニメーションが見えるように改良された。 +フェナキスティスコープ{{image eizokisoen-no1-06.jpg,映像基礎演習-第1回-2009,alt:フェナキスティスコープ}} +ヘリオシネグラフ{{image eizokisoen-no1-07.jpg,映像基礎演習-第1回-2009,alt:ヘリオシネグラフ}} !!参考図書 *映像体験ミュージアム-イマジネーションの未来へ 東京都写真美術館 工作舎 *CG&映像しくみ辞典 ワークスコーポレーション *日本アニメーション協会 http://www.jaa.gr.jp/j/ *goo http://www.goo.ne.jp/ *Yahoo! JAPAN http://www.yahoo.co.jp/ *Film before film {{amazon3 4875023960}} {{amazon3 4948759511}} {{amazon3 B000006PDX}}