表現技術 第1回 オリエンテーション [2007年度 後期]
コンピュータグラフィックス概要
サイト内のページ 映像基礎演習-第9回-2007 を参照。
映像制作ワークフロー例
まず制作の流れを頭に入れておいてください。ここで紹介するのは業務目的の場合なので個人制作の場合は簡略化したりできる部分は多いと思います。多人数で制作するときに重要なのは目標や手段の共通認識を持つことやスケジュールの調整だと思いますが、その辺は個人・少人数制作の方が楽だといえます。
3DCGを用いた映像制作のおおまかな流れは以下のようになることが多いです。
- 企画
- コンセプト、テーマ、ターゲット、ストーリー、企画コンテ、ロケハン、制作スケジュール、制作規模、予算編成、スタッフ、機材など、制作の概要の決定。もちろん制作の順序は企画毎に変化する
- プレゼンテーション・打ち合わせ
- クライアントやスタッフ間での企画の売り込みや練り上げ
- 脚本
- シナリオ
- 絵コンテ
- 演出コンテ
- 制作打ち合わせ
- 主に制作スタッフ間でのもの
- 制作・機材準備
- プリビジュアライゼーション
- CGでの合成が必要な場合、撮影前にCGによるプリビジュアライゼーションを行い、構図や俳優の演技、演出面でのチェックを行う。ロケハン時に撮影場所の計測などをしておき、仮映像化のため準備をしておく
- 撮影
- カメラで映像を撮ること。劇映画の場合、俳優が芝居をするのはこの工程です。
- モーションキャプチャ
- 人間の動きを計測してリアルなモーションデータを作成する。
- CG制作
- デザイン決定→モデリング→質感設定→ボーン設定→アニメーション→ライティング→カメラワーク→レンダリング だいたいの場合、このような順序になる
- ポストプロダクション
- 編集、ナレーション、BGM,効果音など
- 試写
- 完成・納品
この流れは制作スタイルや企画意図によってかなり変わるものです。例えば、音楽が作品の重要なテーマになっていたりすると楽曲をベースにストーリーや演出が決まったりするため、事前に準備する必要があります。
3DCG制作ワークフロー
上記の映像制作内のCG制作の部分をCG制作スタッフが担当するわけですが、大手のCGプロダクションだと作業内容によって部署が分かれます。(少人数の場合は、いくつかの作業をかけもちすることになったりします)
- モデリング
- 形を作る作業です。3DCGソフトウェアの架空空間の中に立体物のデータを作ります。
- 質感設定
- モデリングの工程で制作した立体データに質感を与えます。色をつけたり、写真や画像(テクスチャ)を貼り付けたり、光沢やデコボコを与えたりできます。
- ボーン設定
- キャラクターアニメの場合、人型や動物などを動かす必要があります。その際に擬似的な骨を組み込むことで関節を作ることができます。あとIK(インバース・キネマティクス)やFK(フォワード・キネマティクス)を設定して動きを半自動制御することもできます。これらの工程をリギングとも呼びます。
- アニメーション
- 3DCGオブジェクトに動きを与えることができます。セルアニメなどでおなじみのキーフレーム・アニメーションや、重力、摩擦、慣性などをシミュレートする物理シミュレーションなどがあります。
- ライティング
- 本来CGには光というものが存在しないため、適切な光源を設定する必要があります。光源をどう設定するかで画面の構成や演出が劇的に変化します。
- カメラワーク
- カメラからの見た目が映像そのものになります。CG内のカメラは現実のものよりも自由度が高く、現実的にはありえない場所に置いたり、ものすごい速度で動かすこともできます。
- レンダリング
- 仮想空間である3DCGデータから画像(2D)を作成する工程をレンダリングといいます。映像化する際に必要になりますが、膨大な計算処理が必要なため大変時間がかかります。一般的に高品質のものを求めるほどに計算時間も長くなります。
- 合成、エフェクト等
- レンダリングして生成された画像を合成したり、エフェクトを与えたり、色調補正したりして、より品質を高める工程です。静止画データだとAdobe Photoshopなどでやる作業ですが、動画だと1枚1枚作業するのは大変なので動画用の加工ソフトウェアを使います。有名なものにAdobe AfterEffectsなどがあります。
- 編集
- 合成や色補正などを終えて完成したカットをつなげたり音を入れたりしてシーンを作ります。そして、いくつかのシーンが集まって一本の映像作品ができあがります。
3DCGソフトウェア
CGプロダクションやゲームメーカーなどで主に使われているソフトウェアを挙げると
- '''MAYA'''
- '''3dsmax'''
- '''LightWave3D'''
- '''SOFTIMAGE XSI'''
などがモデリング、アニメーション、レンダリングなどほぼ全制作過程を通じて使えるソフトとしてよく使われています。その他にレンダリング用のソフトウェアとして有名なものとして
- '''RenderMan'''
- '''MentalRay'''
- '''POV-Ray'''(フリーウェア)
- '''FinalRender'''
- '''Redqueen'''(フリーウェア)
などがあります。このように各機能に特化したものも存在しています。
メタセコイアについて
メタセコイア(Metasequoia)というのはモデリング専用のWindowsソフトウェアです。非常に安価(5,000円)でありながら十分実用に耐える機能を備えています。(ちなみに商用のMaya Complete 279,300、Maya Unlimited 976,500、アカデミック版だとMaya Complete 8.5 103,950、Maya Unlimited 8.5 120,750 です。モデリングしかできないソフトですがメタセコイアのコストパフォーマンスがいかに高いかわかると思います。) シェアウェアソフトなのでインターネットでプログラムをダウンロードし、作者に料金を送金してIDとパスワードをもらいます。
- 「metaseq.net」ホームページ
- http://www.metaseq.net/
- ここでプログラム本体やプラグインがダウンロードできます。
- 機能制限のある無料版メタセコイアもあるので、とりあえず無料版を試してみてもっと本格的に使いたくなったらシェアウェア版を購入するのでもいいと思います。
メタセコイアはポリゴンモデラーです。ポリゴンを使って造形していきます。
メタセコイア リンク集
- 3ping.org Metasequoia チュートリアル
- メタセコ普及委員会
- d00 Metasequoia
- conquistador cielo
- http://www.geocities.co.jp/Playtown/5193/
- 「CG」の中にメタセコイアのチュートリアルがあります
- 私家版 メタセコイア用プラグインリンク集
- mini mqo Viewer
- http://www.geocities.jp/h_h_n_01/mmViewer/
- メタセコイアのモデルを見るためのビューワーです。
- .zipと.mmzの中の.mqoファイルも表示出来ます。
- CelsView
- http://sio29.sakura.ne.jp/celsview/celsview.html
- メタセコイアのモデルを見るためのビューワーです。
- 現状ではMQOと独自形式MVVのみに対応しています。
- おちゃこLAB
- http://www5d.biglobe.ne.jp/~ochikko/
- メタセコイア、六角大王で作ったモデルデータにボーンを埋め込んで、キャラクターアニメーションを作成することができるフリーソフト「RokDeBone2」を配布されています。
- 松井めし画術HP
- http://mattaku.sa-ra-sa.com/
- メタセコイアで使った人体モデル等のボーン変形、モーション編集ができるソフトウェア「Mikoto」の本体ソフト配布・TIPSなどが掲載されてます。
- 「Mikoto」の開発元であるSASAKING DOMは更新が止まっており、ソフトのダウンロードもできないため上記サイトを紹介しています。
- MM-TIPS(『Wicth・Craft』のTIPSページ)
- http://www108.sakura.ne.jp/~witchcraft/mm/mm.html
- こちらもメタセコイアと「Mikoto」のソフト二次配布&TIPSを公開してるサイトです。セル風画像の輪郭線を出す方法など細かい技法も面白いです。Wicth・CraftさんのトップページからはメタセコイアやMikotoで作ったゲーム系人体モデルのダウンロードもできます。
- メタセコイアは安くて使える人気のある国産ソフトなので、日本語で開設してるホームページが多数あります。Google等で検索してみてください。
参考図書
- CG&映像しくみ事典―映像クリエイターのためのグラフィックバイブル 完全カラー図解
- CGWORLD (著), スマートイメージ (著), CG‐ARTS協会 (著)
- ¥ 3,150 (税込)
- 映像の歴史、映像のしくみ、機械のしくみ、CGの概要、アニメ制作の概要、演出等の基礎知識…などなど映像制作を学ぶ人にはとても有用な情報がギッシリつまった一冊です。ほぼ全編カラー図版で作られているので流し読みしても楽しい。3150円という安価設定も特筆ものです。映像に関わる人、興味のある人はぜひ購入してください。
- メタセコイアからはじめよう!―無料で作る3Dキャラクター
- 原田 大輔 (著)
- ¥ 2,079 (税込)
- 初心者向けの本です。3DCGを全くやったことのない人でも本に書いてある通りに作業すればできるようになっています。
- Metasequoia―3D CG メタセコイア入門
- 横枕 雄一郎 (著), 伊藤 真健 (著), むつき はつか (著)
- ¥ 2,730 (税込)
- 初〜中級者向けの本です。
- キャラクターをつくろう! 2Dから3DCGをつくる
- かこみき (著)
- ¥ 3,150 (税込)
- 中〜上級者向けの本です。イラストの人物画を元に3DCGを制作する過程を書いたものです。一通りメタセコイアでのモデリングができるようになったら、とても参考になるでしょう。