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キャラクターデザイン(造形)

キャラクターデザインについて

アニメーションやゲーム用のキャラクターデザインについて押さえておきたいポイントをまとめてみようと思います。

 キャラデザとストーリー、世界観、キャラクター設定は関係している

キャラクターデザインとストーリーとがバラバラなのは、よくありません。何か関係性を持たせたものにしましょう。キャラクターデザインが先に出来上がっていて、後でストーリーを作ったり、その逆だったりと、作業が分断してしまうのはあまりよくないです。できれば、同時に進めるのが良いです。キャラデザとストーリー、キャラクター設定、世界観はそれぞれ相互作用しあっているのが理想だと思います。

 キャラデザで、キャラクターの能力をわかりやすくする

空を飛ぶと女の子という設定だったとしましょう。そのとき、普通の女の子の姿をしているより、翼が生えていたり、プロペラが付いていたり、ロケットエンジンのような噴射口のようなものがどこかに付いていたり、魔法のほうきを持っていたり…と何か飛びそうなものが付随していると見た目だけで飛ぶ能力を持っていることが伝わるので、台詞やナレーションで説明する必要がなくなります。

これは、アニメーションにとってはとても重要な要素の一つです。映像は説明くさくなるとその部分がダレてしまうので、できるだけ映像だけで伝わるような工夫が必要です。

 キャラデザで、キャラクターの職業をわかりやすくする

例えば、高校生であれば高校の制服、柔道部であれば柔道着、小学生であればランドセル、警察官であれば警察の制服、王様なら派手な服に王冠というように、職業によってイメージされる服装を着せておくのは、そのキャラの年齢や設定をキャラデザだけでかなり表現できるので、オススメです。キャラクターの登場シーンで、別に私服でも制服でもどちらでもいいというなら制服を着せておくべきでしょう。

難しいのは、サラリーマンのようにあまり特徴がない場合ですね。職業にあまり意味がないなら、スーツにビジネスバッグという服装でもいいんですが、あまりに一般的すぎて印象が薄くなります。「サラリーマン」という職業は、曖昧すぎるのがよくないのですね。給料をもらっている人はみんなサラリーマンですから。職業にあまり意味がなくて、設定をサラリーマンにしているなら、他の服装の方がいいのかもしれません。どこにでもいる一般の普通の人ということが重要なら、普通のスーツがいいでしょう。

 キャラデザで、性格をわかりやすくする

身に着けているアクセサリーや服装で性格を表現できる場合があります。

性格を表すアクセサリーの例でよく見かけるのは、メガネですね。メガネをつけていると、おとなしそうなイメージがあります。マジメそうだったり、頭が良さそうな印象も付加できます。腹黒系のキャラもメガネが多いような気がしますが、どちらかというと小物キャラです。中ボス的役割の場合が多いですね。

髪型もお坊ちゃん的設定だとオカッパ頭だったり、体育会系の元気な性格のキャラはギザギザ頭だったりすることが多いです。滑らかな形状や丸い形状は静かなイメージ、ギザギザした形は、勢いがあったり、騒々しいイメージがあるためです。

体格も性格を表現します。デカくて丸っこい体格をしていたら、温和でゆったりした性格をしてそう、細い体をしていると神経質そう、筋肉質だと元気そうです。ヒステリー気味の女性キャラなのに、太っていて丸々してるとちょっとイメージが合わない感じがしませんか? それでも別に構わないのですが、太っている理由が特にないならば、痩せてる方がいいんじゃないでしょうか。

丸、三角形、逆三角形、正方形、縦長の四角形、横長の四角形……と基本形状をそれぞれのキャラ毎に割り振ってあるとよいです。体格や髪型もかぶらないようにしましょう。作品中の登場人物は、基本形状、体格、髪型、服装がそれぞれ違うように気をつけてください。つまり、シルエットだけでどのキャラか分からなくてはいけません。制服のようにみんな同じ服を着ている場合も、着こなし方に違いを付けてあげることで性格の違いが表現できますし、シルエットに違いを出すことにもつながります。

 デフォルメを考える

デフォルメはアニメーションやゲームにとってとても重要な要素になります。デフォルメをすることによって、いろいろと作家にとって有利な状況が生まれると僕は思っています。デフォルメされたキャラクターが画面に登場すると、見る側は日常的にはありえないことや、多少の破綻を許容するような心のスイッチが入るような気がするんです。デフォルメされたキャラクターの作品だと許されるけれど、リアルなキャラクターでは許されないことがたくさんあるように感じます。

作品を作るとき、どの程度デフォルメするかは慎重に考えなければなりません。リアルなデザインのキャラクターだと絵に説得力が増します。説得力があるので、とんでもない物理現象なども、もしかしたらそういうこともあるかも……というような気持ちにさせられるのです。高度なVFXを駆使したハリウッド映画などは、リアルだけどありえない自然現象をCGで描き出すことで、ハラハラドキドキするシーンを作り出しているのです。逆にデフォルメされたキャラクターだと、馬鹿なことをやっても自然にみえるし、実際に目の当たりにしたときに辛いようなシーンもデフォルメというクッションがあることで楽に見れるのです。

日本のマンガやアニメのデフォルメのやり方は、キャラクターを幼児化するデザイン法です。目を大きくし、顔の下の方に描きます。幼児化するとかわいく感じますし、愛着がわきやすいんですね。しかし、体はリアルな体系だったりします。この顔は子供で体は大人というところがミソなんでしょうね。可愛くエロちっくに……という願望の表れだとおもいます。日本のアニメ作品は性的に訴えかけようという意識が高い作品が多いですし、どんどんその傾向は強くなっていますね。ともかく、このデフォルメとリアルの混合というデザイン手法を取ることで、リアルな話にもぶっ飛んだ話にも振れるフレキシブルさを持っているのでしょう。背景美術がリアルに描かれることが多いこともそれを助けているように思います。キャラクターはデフォルメ、背景はリアル、という組み合わせによって演出の幅が広がっています。

デフォルメの基準として、頭身という言葉がよく使われます。2頭身だと、頭:体=1:1の比率です。頭と胴体と足の先までの長さが同じになります。8頭身だと、頭:体=1:7です。青年キャラの場合、8頭身だとかなりリアルでスマートな印象になります。マンガだと標準は5〜7頭身くらい、4頭身以下だとギャグ系になってきます。頭身が下がるほどかわいいイメージになるので、かわいいおばあちゃんというキャラなら2〜4頭身くらいが似合うでしょうか。青年だと6〜8頭身くらい……というように、キャラ毎に頭身を振り分けてあげるとよいです。

 キーワードやテーマを設定する

キャラクターデザインにもテーマを持たせるとよいです。馬・豚・熊・サソリのように動物をイメージしてみたり、火・水・月のように自然現象や風景からイメージしたり、番人・王・コバンザメのように役割からイメージしてみたりすると、それぞれのキャラクターデザインの指針が立てやすいでしょうし、資料にするべきものも明確になると思います。キャラクターの能力や性格について考慮してのデザインもいいですし、全くそういうのとは切り離して形の面白さを追求したテーマ設定もいいかと思います。例えば、キノコっていうテーマで、大きい帽子をかぶらせるとか、キリギリスっていうテーマで、長い羽根のような形状のタキシードを着てるとか、エリマキトカゲというテーマで大きな襟の服を着せたりという具合です。シルエットに他のキャラには無い特徴的な形が出るといいですね。

テーマも一つだけじゃなく、二つもしくは三つのテーマを組み合わせてやると、意外なキャラクターが出来上がる可能性が高くなるでしょう。馬のような王、水のような番人という具合です。性格の異なる二つ・三つの言葉をぶつけるとイメージが膨らみます。

シナリオの空気感を壊さない程度に面白いシルエットになるといいキャラクターになると思います。顔の輪郭や体型はもちろんですが、服や髪型もかなり重要なポイントになります。

 手足の表現に気をつける

演技において、顔、特に目、手、足は非常に重要なポイントになります。目、手、足で微妙な表情を表現するので、これらが使えないデザインになっていると、演出上かなりしんどい状態になってしまいます。逆に何を考えているのかわからないキャラにするなら、これらを隠すというのも演出上効果があります。帽子を深くかぶっていたり、サングラスをかけていたり、手袋をしていたり、ずっとポケットに手をつっこんだままだったりすると、謎の人物という印象になります。

ですから、劇作品において、目や手や足を適当に動かしてはならないということです。目が大きいデザインになっているなら、なおさらです。ミッキーマウスなどのアニメキャラの手足が大きいデザインは、表情を豊かにするという意味においても有用であったわけです。

 色について考える

色にはイメージがあります。赤系、青系、緑系、黄色系、紫系、黒系、白系、パステル系などが考えられますが、それぞれ色から受ける印象が違うので、性格や役割に合わせて配色を工夫する必要があるでしょう。単色の場合と複数の色を組み合わせた場合でも変わってきます。また、模様などでも印象が変わります。色のデザインは想像以上に複雑なのですが、基本的には、メインの色を決めて、役割の重要度に応じて色数をコントロールするといいと思います。例外はありますが、主役級のキャラは色数多め、脇役は少なめと考えればいいでしょう。

大雑把にいうと、暖色系の色は活発な印象、寒色系の色は静かな印象、黒は悪の印象、白は善の印象、彩度が高いと印象が強い、彩度が低いと印象が弱いように感じます。

話の途中でキャラクターの色が変わると性格や能力や心情が変わったという意味になったりします。「ドラゴンボール」でスーパーサイヤ人に変身したときに黄色くなりますが、分かりやすい例ですね。気持ちが落ち込んでいるときは、暗く、彩度を下げ、寒色系にシフトさせたりします。これは、キャラクターデザインをそうしてもいいですし、照明の効果としてそうしてもいいでしょう。キャラデザ的に色を変える例としては、落ち込んでるときは、落ち込んでる色の服を着せたりするわけです。照明効果の例でいうと、天気が雨だったり、暗い部屋にいたり、夜だったりするのです。

 アクセサリーの数

キャラクターデザインにおいて、アクセサリーや小物類はストーリー運びや演出効果などの意味においても重要ですが、誰がメインキャラなのかをわからせるという意味においても重要です。やはり、主人公は凝ったデザインになっているべきでしょう。脇役より地味だと影の薄い主人公になってしまいます。上の色のところにも出ていましたが、主人公は他よりも色の数も多かったりすると効果的ですが、持ち物を持っていればそれだけ色も増やせます。

ただし、あまりゴチャゴチャしているのはよくありません。線や色が多いとチカチカした映像になってしまいますので、あまりゴチャつかず、それでいて、主人公であることが伝わるデザインを目指したいですね。

 やはりなんといっても顔が命

キャラクターにとって顔は命です。地味な性格、派手な性格、強気な性格、弱気な性格、わがままな性格、陰気な性格……いろいろなキャラクターがいますが、どのような性格であれ、いい顔にしてほしいです。いい顔というのは、決して美男美女でないといけないわけではなく、いい顔です。良識のある顔、悪役らしい顔、達観してる顔、そのキャラにとって最高の顔を作り出してほしいです。実際に活躍してる役者の方はみな個性的でいい顔の方ばかりでしょう? いい演技やいい思想をもっているから、いい顔になっていくということもあります。表情の付け方ひとつでキャラクターは死にも生きもします。キャラクターに心を吹き込んであげてください。キャラクターは生き生きしていますか?

 キャラクターが際立つ構図を考える

キャラクターが生きるカメラアングルを考えてください。単純な例でいうと、デカくて強そうなキャラは下からあおって撮った方が強そうに見えます。いつも寂しそうにしてるキャラは後ろ姿の方がいいとか、仲良しオーラがにじみ出てるようなキャラは目の高さのカメラアングルの方がいいでしょう。色っぽいお姉さんは、斜めから撮った方が流し目の妖艶さやボディラインを見せられるので効果的かもしれません。

カメラアングルはシナリオを考慮して決めていくべきものなので、いつもこれらのアングルではおかしいかもしれませんが、コレ!というところでは、キャラが活きるカメラアングルであるべきでしょう。カメラアングルもキャラクターによって違うのです。同様に照明も同じようなことが言えます。

 キャラクターを表現する音

キャラクターは音でも表現できます。かわいい感じのする音、落ち込んだ感じのする音、オタクっぽい音、強大な感じのする音など、キャラクターのイメージを音で表現できるとさらに効果的です。キャラクターが身につけているものと音が関係していたりすると良かったりするかもしれません。幽霊とかはヒュ〜〜〜ドロドロドロの定番のBGMとかがあったりしますが、あれなんかは凄い表現だと思います。昔の劇などは、楽器で効果音を作ったりしていたので、参考になるものが多いでしょう。いろいろと考えてみてください。

 口癖をつくる

人は性格が口癖となって表れてきたりします。状況によっても変わります。緊張してるときとリラックスしてるときでは口調も口癖も変わるでしょう。アニメやマンガでは、定番の口癖をつけるのは、ごく当り前のようにやっています。口癖を決めてあげると演出上有利になることが多いのです。文字や声だけでも、誰が話しているのかわかりますし、キャラクターの性格を強調させるのにも役立ちます。

決め台詞といのがあります。最後に決まって言う台詞だったりするやつです。ポケットモンスターの「ポケモン、ゲットだぜ!」とか水戸黄門の「この紋所が目に入らんか!」とかです。短編作品の場合、これらのように毎回使うというわけにはいきませんが、ゲームの場合、戦闘終了時にいう台詞とかを作っておくと、その台詞込みでキャラクターの個性として定着していきます。決め台詞があると、記憶に残りやすいですし、爽快感のようなものも生まれてきます。

 要素(パーツ)組み合わせるという考え方

今、萌え要素といわれているものがあります。ネコミミとかメイド服とかアホ毛とかニーソックスとか、そういうオタク系ジャンルのキャラに定番的に使われている要素を指しています。オタク系ジャンルの中で認知されている要素を組み合わせることで作られるキャラクターは、特に新規性というものが無かったりしますが、定番のアレという共通言語的役割を果たしており、そのデザインに特に意味は無くても、とりあえず組み込んでおくことで、萌えるデザインだということになっています。逆にいうと、典型的な萌えキャラを作るのであれば、萌え要素を組み込んでいなければならないのです。これらの萌え要素はライブラリー的に取捨選択して適当に組み合わせるだけで、簡単に萌えキャラ化します。水戸黄門のおじいちゃんでも、ネコミミとかメイド服とか付けてあげれば、ある意味萌え系になるかもしれません。

このことから学ぶ点は、キャラクターは要素の集合体でも成立するのだということです。目はどんな形か、鼻の形はどんな形か、顔の輪郭は、髪型は、服装は、頭身は、口癖は……と、様々な要素をライブラリーの中から選び出して並べると、一人のキャラクターが出来上がってくるのです。モンタージュ写真と同じ発想ですが、好きなものライブラリーから選び出してきたもので作り上げてるんだから、好きなものができるだろう?という考え方が上の萌え要素の組み立ての考え方です。ライブラリーは他にもいろいろあるだろうと思います。悪役要素のライブラリー、正義の味方要素のライブラリー、ファンタジーRPG要素のライブラリー……という具合です。