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映像基礎演習-第10回-2007

映像基礎演習 第10回 CG(Computer Graphics)の歴史1 [2007年度前期]

 CGの誕生と歴史

(『CG&映像しくみ辞典』 株式会社ワークスコーポレーション より引用)

CGの誕生から現在までの足取りを簡単に紹介

コンピュータグラフィックスは'''マサチューセッツ工科大学(MIT)で米国の軍事目的の研究としてスタート。ユタ大学'''を中心にコンピュータサイエンスの学術研究が進められていたが、そのの一部としてCGの基本アルゴリズムが開発され、そのうち民間企業(ゼロックス社など)へ波及し、グラフィック処理に特化したハードウェアやソフトウェアが開発されるようになった。

 年表

1940〜50年代 軍事技術としてのCG誕生

  • 1944 MITによる高性能フライトシュミレータ開発計画「ワールウィンドプロジェクト(Whirlwind)
  • 1948 MIT、ワールウィンドコンピュータにCRTを取り付け、点描画の実験=史上初のCG
  • 1951 MITを中心として、'''半自動防空管制システム「SAGE」'''の開発スタート。人間とコンピュータとのインタラクティブなシステムとして1963年に稼働開始。1984年まで使用された。
  • 1958 米国防省、基礎科学研究の推進のためARPA(先進研究計画局: Advanced Research Projects Agency)を設立。現在のDARPA(防衛先進研究計画局: Defense Advanced Research Projects Agency)の前身。
  • 1958 カルコンプテクノロジー社のドラムプロッタの発売。CGを紙に転写できるようになり、CGアートを作る研究者や作家が60年代に急増。
  • 1958 ジョン・ウィットニーがモーションコントロールカメラを開発。歯車式アナログコンピュータで制御するもの。
  • 1958 『めまい』(監督:ヒッチコック)のタイトルに上記のモーションコントロールカメラが使用される。 YouTube
  • 1959 MITでCADシステムの研究がはじまる
  • 1959 ジェネラルモータースとIBMの間で、最初のCADシステム「DAC-1」の共同研究開発が開始。

1944_Whirlwind-computer-at-.jpg 1948_whirlwind_first_cg.jpg
ワールウィンドプロジェクト(Whirlwind)

1951_sage.jpg 1951_light-pen.jpg
半自動防空管制システム SAGE

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カルコンプテクノロジー社のドラムプロッタ

1959_dac1.jpg
最初のCADシステム「DAC-1」

1960年代 コンピュータサイエンスの開花

  • 1961 サザーランド、対話型図形処理システム「スケッチパッド」の開発開始。1963年に発表=史上初の対話型システム。
  • 1964 ニューヨーク世界博覧会にてグラフィックフィルム社が全天周映像作品『To the Moon and Beyond』を上映。これに興味を持ったキューブリックが『2001年宇宙の旅』特撮チームにスタッフを招聘。
  • 1965 サザーランド、VRの原型となるヘッドマウントディスプレイと映像を直接操作できる杖を研究開始。1970年に完成。
  • 1966 エヴァンス、ユタ大学コンピュータサイエンス学部を創設。サザーランドを誘う。
  • 1968 エヴァンス、サザーランドとともに大学内にEvans & Sutherland社を設立、CGのビジネス化を模索。
  • 1968 『Kitten』ソ連でラインプリンタを用いて、ネコのキャラクターを動かしたアニメーション YouTube
  • 1968 A.Appel(IBM)によってレイ・キャスティング・アルゴリズムが開発される。
  • 1969 ロバーツ、パケット交換によるネットワーク「ARPAnet」を提案、開通させる。
  • 1969 マンスフィールド修正法案によりARPAが軍事研究に限定される。
  • 1969 スキャニメイト(SCANIMATE)発表(1969年) アナログCGマシン
  • 1969 ACMにSIGGRAPH(Special Interest Group on Graphics)が発足した。アメリカ。

1960_fetter_human_drawing.gif
ボーイング社におけるCAD開発

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スケッチパッド サザーランド

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究極のディスプレイ サザーランド

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「Computer Nude」AT&Tベル研究所のケネス・ノールトンとレオン・D・ハーモン

1969_scanimate.jpg
スキャニメイト(SCANIMATE)

1970年代 基本的なCGアルゴリズムの開発

  • 1970 サザーランドがサイエンティフィックアメリカン誌に「Computer Displays」を発表。全米からユタ大へ後にコンピュータ業界のキーマンとなる学生たちが集まる。
  • 1970 ゼロックス社がコンピュータ研究のためにパロアルト研究所を設立する。
  • 1971 ユタ大学陰面消去法、シェーディング、マッピングなど現在の基本的なCG表現のアルゴリズムが次々と開発される。
  • 1971 パロアルト研究所のシュタークウェザーがレーザープリンターを開発。
  • 1971 ロバート・エイブルとコン・ペダースンがロバートエイブル&アソシエイツ社を結成。モーションコントロールカメラオプティカル合成を駆使したCMが話題に。
  • 1972 MAGI社がCGソフト開発と映像制作部門シンサビジョンを開設。レイキャスティング(レイトレースの原型)を導入し、1982年には映画『'''トロン'''』に参加。
  • 1972 コンピュータゲーム「Pong」
  • 1973 Evans & Sutherland社が世界初の3DCGシステム「LDS-1」「LDS-2」を市販。
  • 1973 パロアルト研究所のメトカーフ、LANにパケット通信を利用した「Ethernet」の開発を開始。
  • 1973 パロアルト研究所のアラン・ケイ、パーソナルコンピュータ「Alto」を開発。
  • 1973 パロアルト研究所のショープが世界初のカラーフレームバッファ「SuperPaint」を開発。現在のペイントソフトの原型。
  • 1973 マイクル・クライトン監督・脚本映画『ウエストワールド』のCG画像をウィットニーの長男ジョン・ウィットニーJrがトリプルアイに持ちかけ、制作。
  • 1974 パロアルト研究所でWYSIWYGを可能にしたテキストエディタとマウスによるGUI操作が可能な世界初のワードプロセッサを開発。
  • 1974 ユタ大学を卒業したキャットマルがニューヨーク工科大学のCGラボ所長に。本格的な2Dアニメシステム、合成システム、3DCGの研究を行う。
  • 1975 ルーカス、ジョン・ダイクストラなど『'''スターウォーズ』の特撮スタッフを集めてインダストリアル・ライト&マジック社を設立。モーションコントロールカメラ'''などを開発。
  • 1976 ジョン・ウィットニーJrがトリプル・アイ内にCGによる映画制作チームを結成、映画におけるCG導入を積極的に推進。
  • 1979 オハイオ州立大学のスーリがアニメーションとモデリングのシステム「ANIMA II」や「ANTTS」を開発。
  • 1979 '''SIGGRAPH'''(CG学会)にて初めてフィルム&ビデオショーが開催される。興味を持ったジョージ・ルーカスがキャットマルらをヘッドハント。
  • 1979 ジェームズ・クラークが世界初のグラフィックプロセッサ「'''ジオメトリエンジン'''」を設計。

1971_Utah-algorithms.jpg
ユタ大学で基本的なCGアルゴリズムが開発される

1972_pong.jpg
「Pong」コンピュータゲーム

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パーソナルコンピュータ「Alto」

1973_superpaint_rack.jpg 1973_superpaint_works.jpg
ペイントソフトの原形「SuperPaint」

1980年代 普及型の画像処理マシンや3DCGソフトの登場

  • 1980 ルーカスフィルム内にコンピュータ部門を発足させ、音響・編集・CGの3つのプロジェクトを構成。1984年までの間に、デジタル合成マシン「Pixar」を設計、フォトリアルなレンダラの開発研究なども行い、世界初のノンリニア編集マシン「'''EditDroid'''」も開発した。
  • 1982 パロアルト研究所でページ記述言語を開発していたワーノックとゲシキが'''アドビシステムズ社'''を創設。
  • 1982 スーリとジム・クリストフがクランストン・スーリ・プロダクションを研究室の隣に設立。後のメトロライトスタジオの前身。
  • 1982 クラークが'''シリコングラフィックス社(SGI)'''を創設。ジオメトリエンジンを商品化し、1984年に初のグラフィックワークステーション発売。
  • 1983 「Alto」に衝撃を受けたスティーブ・ジョブスがMacintoshの前身となる16bitパソコン「'''Lisa'''」を発売。
  • 1983 カナダのステファン・ビンガムがエイリアス・リサーチ社設立。翌年、ALIAS/1を発売し、自動車メーカーからCAD用に大量の受注。
  • 1984 ルーカスのCGプロジェクトにディズニーのジョン・ラセターを招聘し、『'''アンドレとウォーリーB.の冒険'''』を制作。
  • 1984 ロバート・エイブル&アソシエイツのビル・コバックスが独立し、ウェーブフロントテクノロジー社設立。UNIXベースの3DCGシステムを開発。
  • 1985 キャットマル、ラセターらが'''ピクサー社(PIXAR)'''として独立。
  • 1985 モントリオール大学のCG研究チームが制作した短編3DCGアニメ『'''ピアノ弾きのトニー(Tony de Peltrie)'''』がSIGGRAPHで話題に。
  • 1985 コモドール社が独自のグラフィックマシン「'''Amiga'''」を発売。
  • 1986 カナダのオムニバスビデオ社が政府の助成金を得て、次々とCG関連会社を買収。
  • 1987 オムニバス社にいたキム・デヴィッドソンらがサイドエフェクト・ソフトウェア社を設立。オムニバス時代のソースを買い取り、「PRISM」を製品化。
  • 1987 モントリール大学のCG研究チームがソフトイマージ社を設立。UNIXベースの3DCGソフト「'''SOFTIMAGE 3D'''」を発売。
  • 1989 アビッドテクノロジー社が世界で2番目となるノンリニア編集システムを発売。ルーカスの編集プロジェクト会社を買収。

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再帰的レイ・トレーシング Turner Whitted (1980)

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16bitパソコン「Lisa」

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グラフィックマシン「Amiga」

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『ピアノ弾きのトニー』 モントリオール大学

 1990年代 高速化されたPCと次世代ソフトの台頭

  • 1990 ニューテック社がAmiga専用グラフィックボードVideoToasterを発売。3DCGソフト'''LightWave3D'''をバンドル。後にNTに移植され独立ソフトに。
  • 1990 エイリアス・リサーチ社エンターテインメント産業向けに「'''PowerAnimator'''」を発売。
  • 1990 フランスのトムソン・デジタル・イメージ社の開発部門が「EXPLORE」を発売。
  • 1990 米国CADソフト大手の'''オートデスク社がIBM−PC互換機向け3DCGソフト「3D Studio」を発売。後にNTに移植され、「3D STUDIO MAX'''」に。
  • 1992 シリコングラフィックス社がグラフィックスサブシステムRealityEngine発表。
  • 1992 アップルコンピュータが'''QuickTime'''発表。PCクラスの動画処理の先駆けとなる。
  • 1994 マイクロソフトによるソフトイマージ社の買収。
  • 1994 シリコン・グラフィックス社がエイリアスとウェーブフロントを傘下におさめ、エイリアス・ウェーブフロント社に。
  • 1994 プレイステーションセガサターンなど高いグラフィック処理能力を持つ家庭用ゲーム機が登場。
  • 1995 ピクサーによる世界初のフル3DCG劇場作品『'''ToyStory'''』がヒット。
  • 1998 マイクロソフト社、アビッドテクノロジー社にソフトイマージ社売却。
  • 1998 エイリアス・ウェーブフロント社がPowerAnimatorの後継となるMayaを発売。
  • 2000 アビッドテクノロジー社がSOFTIMAGE3Dの後継となるSOFTIMAGE XSIを発売。

1990_VideoToaster.jpg
Amiga専用グラフィックボード「VideoToaster」

 参考文献

  • Wikipedia
  • MIT公式サイト
  • 映画作品CGIまとめ(1970年〜現在)Timeline of CGI in film and television (Wikipedia,英語)
  • CGI Historical Timeline(英語)
  • コンピュータグラフィックス関連年表(The Story of Computer Graphicsを中心として)(日本語)
  • 特殊映像博物館 (大口孝之)
  • A Critical History of Computer Graphics and Animation(英語)
  • Metadata(1971)
    • 監督:ピーター・フォルデス(Peter Foldes、ハンガリー出身)、アニメーション:Nestor Burtnyk、Marceli Wein、音楽:Maurice Blackburn、Alain Clavier、プロデューサー:Pierre Moretti
    • フォルデスは本作で、コンピュータをアニメーションに用い、アニメーション・アートの新しい方向性を示した。カナダ国家研究評議会(NRCC)のコンピュータでアニメーション制作の大半がおこなわれ、何百もの動きのデータが保存され、流動的な動きの生成やエフェクトの開発に活用された。現代のCG制作ワークフローの原型を作った。コンピュータがなければ、一つ一つの動きやインプレッションを手で描く、気の遠くなる作業をせねばならなっただろう。生命の要件から逃避しようとする、人間の欲を本作で描いたフォルデスは、この次回作『餓鬼(Hunger)』でコンピュータアニメーションとして世界初のオスカーにノミネートされるが、惜しくも1977年、55歳で世を去った。
    • http://www.nfb.ca/trouverunfilm/fichefilm.php?id=10954

【書籍】CG&映像しくみ辞典 ワークスコーポレーション