映像基礎演習 第8回 映像作品の内容分析2 [2007年度前期]
ユーリ・ノルシュテイン
ユーリ・ノルシュテイン(Yuriy Borisovich Norshteyn, 1941年9月15日 - )は、ロシアのユダヤ人アニメーション作家。正式名はユーリ・ボリソヴィチ・ノルシュテイン。第二次世界大戦戦時下に疎開先の、ペンゼンスキー州ゴロヴニシチェンスキー地区アンドレエフカ村で生まれた。1943年にモスクワに戻る。
家具職人をしていたが1959年に、オサユーズムリトフィルム国立映画スタジ付属のアニメーターコースに入学、卒業後サユーズムリトフィルムで、『せむしのこうま(イワンの仔馬)』や『森は生きている』などのイワン・イワノフ=ワノや、『ミトン』そして『チェブラーシカ』などで知られるロマン・カチャーノフなどに師事する。アニメーションの声優として参加もした。
セルゲイ・エイゼンシュテインに強く影響され、モンタージュ技法を好んで使う。 好きなアニメーション作家は、フレデリック・バック、ノーマン・マクラレン、川本喜八郎、個人的にも交流の深い高畑勲など。ディズニー作品も、小さな頃から好きである。 しかし、CGによって作られたアニメーションを嫌っており、人間の想像力を疎外したものからは、何も生まれないと苦言を呈している。
『老人と海』で知られるアレクサンドル・ペトロフとは、師弟関係にある。
切り紙によるアニメートを得意としている。
- 1968年 - 『25日・最初の日』
- 1971年 - 『ケルジェネツの戦い』
- 1973年 - 『狐と兎 』
- 1974年 - 『あおさぎと鶴』
- 1975年 - 『霧につつまれたハリネズミ』
- 1979年 - 『話の話』
- 1995年 - 『ロシア砂糖のTVコマーシャル』
- 1999年 - 『おやすみなさいこどもたち』
- 2003年 - 『冬の日』(アニメーション作家35名による合作)
- 1980年〜現在 - ゴーゴリ原作の、『外套』を、幾度か中断しながらも製作中。
霧につつまれたハリネズミ Little Hedgehog in the Fog
- 1975年/12分/カラー
- 脚本:S. コーズロフ/監督、アニメーション:Y. ノルシュテイン/美術:F. ヤールブソワ/撮影:A. ジュコーフスキー/作曲:M. メェロ−ヴィッチ/編集:N. アブラーモワ/声優:A. バターロフ(語り)、M. ビノグラードワ(ハリネズミ)、V. ネビンヌイ(小熊)
- 第九回全ソ連映画祭 最優秀賞(フルンゼ/1976)
- 第十回テヘラン国際青少年映画祭 最優秀賞と金の大メダル(イラン/1977)
- ロンドン・フェスティバル“年間最優秀映画”賞(イギリス/1977)
- シドニー国際映画祭“銀のブーメラン”賞(オーストラリア/1978)
- ヒホン優秀短編児童映画賞 (スペイン/1977)
- シカゴ国際映画祭 第三位“ブロンズヒュ−ゴ”賞(アメリカ/1978)
- エシリニオ国際映画祭 最優秀賞(ポルトガル/1978)
- 小さなハリネズミがハンカチにつつんだジャムの壷をかかえ、仲良しのコグマの家へ向かう。その途中、野原の霧の中で 道に迷ったハリネズミがさまざまな不思議に出会う・・・。いつしか観客もハリネズミと一緒に霧につつまれたような不思議な気持ちになる、一度見たら忘れられない作品。
話の話 A Tale of Tales
- 1979年/29分/カラー
- 脚本:L. ペトルシェフスカヤ、 Y. ノルシュテイン/監督、アニメーション:Y. ノルシュテイン/美術:F. ヤールブソワ/撮影:I. スキダン=ボーシン/音楽:M. メェロ−ヴィチ、およびW. A. モーツァルト、J. S. バッハ/編集:N. アブラーモワ/声優 :A. カリャーギン(狼)
- 第十三回全ソ連映画祭 最優秀賞(ドウシャンペ/1980)
- リラ国際映画祭 最優秀賞、国際批評家連盟賞、ノルド賞(フランス/1980)
- オーバーハウゼン国際映画祭 国際映画クラブ連盟賞(西ドイツ/1980)
- カトリック批評家賞(1980)
- 第五回ザグレブ国際映画祭 最優秀賞(ユーゴスラヴィア/1980)
- オタワ国際映画祭 最優秀賞(カナダ/1980)
- 第二回モスクワ国際青少年映画祭 最優秀アニメーション賞、観客審査員賞(1980)
- ロサンジェルスにおいて行われた映画芸術アカデミーがハリウッドASIFAと共催した国際アンケートで『話の話』が“歴史上世界最高のアニメーション映画”として認められた。(アメリカ/1984)
- つぶやくような子守歌。それに呼び出された狼の子。狼の子はおぼえている。廃屋に大勢の人が平和に住んでいた時代、街灯の下で男女がタンゴを踊った時代、男たちが戦場に奪い去られた時代・・。忘れ去られた時をこのアニメは詩として歌う。幻想的であり強烈なリアリティ。世界アニメ史上に残る名作。
アレクサンドル・ペトロフ
アレクサンドル・コンスタンチノーヴィチ・ペドロフ(1957年7月17日〜)は、ロシアのアニメーション作家である。ヤロスラヴリ州プレチストエ村に生まれる。
ヤロスラワ美術学校(ロシア)、映画学校(モスクワ)等を経て1981年にアートディレクターとして映画界に入った。
ユーリ・ノルシュテインに師事した後、1989年に『雌牛』(The Cow)を発表。
『雌牛』は 1990 年のオスカー賞にノミネートされ国際的に注目を浴びたのを始として,第3回広島国際アニメーションフェスティバルグランプリのほか,バルナ(ブルガリア),オタワ(カナダ)アニメーションフェスティバル,ベルリン映画祭にて受賞。
その後、ヤロスラワにてパノラマ社を設立し,第2作目『おかしな夢を見る男』(The Dream of aRidiculous Man)を1992年に発表し1994 年にかけてアネシー(フランス)、オタワ,タンペレ(フィンランド),エスピノ(ポルトガル),ビラコンデ(ポルトガル),広島など,世界各地のアニメーションフェスティバルで数々の賞を受賞。
『マーメイド』(The Mermaid)は,1998 年のオスカー賞に2度目のノミネートをされた他、シネナニマ97のグランプリ、広島国際アニメーションフェスティバル広島賞等々を受賞。
1999年にアーネスト・ヘミングウェイの原作による『老人と海』(実に2万9千枚ものガラス板に描かれた油絵からなる)で、アカデミー賞短アニメーション賞を受賞した。
老人と海
- 1999年/40分/カラー/IMAXシアター
- アーネスト・ヘミングウェイの原作による『老人と海』をアニメーション化。ガラス板に描かれた画を使ったIMAXシアター作品で上映サイズは世界最大級のもの。ロシア、日本、カナダの合作。アカデミー賞短編アニメーション部門賞、英国アカデミー賞(BAFTA)短編アニメ賞など多数受賞している。
マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット
オランダ生まれの映像作家。デザイン、ストーリー、監督を務めた2000年公開の『岸辺のふたり』が世界的に高い評価を得る。
岸辺のふたり Father and Daughter
- 2000年/8分/カラー
- 監督・脚本・デザイン:マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット/音楽監督:ノルマン・ロジェ、ドゥニ・シャルラン
- 米アカデミー賞 短編アニメーション賞受賞
- 英アカデミー賞 短編アニメーション賞受賞
- 広島国際アニメーションフェスティバル グランプリ・観客賞受賞
- オランダアニメーション映画祭 グランプリ受賞
- カナダ オタワ国際アニメーション映画祭 観客賞受賞
- ポルトガル シナニマアニメーションフェスティバル グランプリ受賞
- 仏クルモン・フェラン短編映画祭 最優秀アニメーション映画賞受賞
- デジタルセルアニメーション制作システム「ANIMO」を使い、極めてシンプルながらも深い味わいのある絵づくりに成功した。セリフを一切使わず、アコーディオンとピアノによる背景音楽によって、その絵はますます雄弁に語りかけてくる。 音楽監督は、『老人と海』『木を植えた男』など名作をてがけてきているノルマン・ロジェと、『大いなる河の流れ』のドゥニ・シャルラン。今回、彼らが選んだ曲は、日本でも愛されている「ドナウ川のさざ波」で、哀愁を帯びた旋律が清澄な世界を一層深めている。
参考文献
【DVD】ユーリ・ノルシュテイン作品集
【DVD】老人と海/ヘミングウェイ・ポートレイト
【DVD】岸辺のふたり