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状況設定から考える

登場人物を特殊な状況に放り込め

世界観・状況の設定についてです。

 もし〜だったら?で考える

長編でも同じことがいえますが、特に短編アニメーションの場合、登場人物を特殊な状況に放り込むという手法はものすごく有効です。実際にはありえないルールを設定してみたり、現実にはいない生物をだしたり、非現実的な状況に登場人物を置くことで面白いお話を作りやすくなります。マンガやアニメには特に多いので、少し思い返せばいくらでも例が見つかるでしょう。

考え方として有効な一つの例は「もし、○○だったら…?」というIfの世界の提案です。

  • もし、宇宙に自由に行くことができたら?
  • もし、人類全員が子供だけだったら?
  • もし、学校だけが白亜紀の世界へタイムスリップしたら?
  • もし、世界全体の女の子からモテモテだったら?
  • もし、お金が無限に沸いてくる財布を拾ったら?
  • もし、ゴムのように伸びる体を持っていたら?
  • もし、本の世界に入れたら?
  • もし、人類全員がウルトラマンだったら?
  • もし、体がポリゴンでできていたら?
  • もし、自分がもう一人いたら?
  • もし、他人と同じ夢を共有していたら?

などなど、いくらでも考えられますが、面白い話が作れそうな気がしませんか? 何かテーマがあって、そのテーマを表現するのに最適な「もし〜?」を考えてもいいし、面白い「もし〜?」を先に考えてそこから、テーマになりそうなものを見つけ出していってもいいでしょう。もしかすると、「もし〜?」自体がテーマになっているかもしれませんね。

自分自身に問いかける

少し脱線しますが、この「?」というのが結構重要なんです。これは自分自身へ、視聴者へ問いかけること。問われれば答えねばという思考が働くでしょう?どうですか?何か心の中で「そうだなぁ」とか「そんなことねぇよ!」と何か答えを言っているはずです。自分自身へ問いかけること、これは創作の根本にまつわる事項です。

状況をエスカレートさせる

物語の作り方で、短編向きだなと個人的に考えているのは、状況を極端にエスカレートさせることです。中途半端に変なものより、ものすごく変な方が興味を惹かれます。常軌を逸している世界と凡人が同居することで面白い状況が生まれます。もしくは、平凡な世界に超人が入り込むことです。

マンガの場合、かなり常軌を逸しているものが登場しますが、登場人物すべてが超人ではその凄さがいまいち伝わりません。感情移入もしにくいですし、比較対象がいなければどれだけ凄いか表現できないのです。以前にもお話したと思いますが、人間は相対的に物事をみる生物です。そこで、凡人の登場です。脇役でも構いません。視聴者と同レベルかそれ以下の人がいなければならないのです。

入れ替えてみる

何かと何かを入れ替えるというのもいい考え方です。よくある例としては、「もし、男が女の体になったら?」とか、「もし、親と子供が入れ替わったら?」とか、「もし、正義と悪がひっくり返ったら?」など、立場や状況がひっくり返ることで、面白い状況が生まれます。

「もし、〜〜だったら」を既存の作品に当てはめてみよう

好きなマンガや小説などをこの「もし、〜〜だったら」に当てはめて考えてみてください。そうすると、物語の大きな枠組みが見えてくるでしょう。長期連載ものの場合、スタート時は必ずしもラストが設定されているわけではありません。面白い状況設定、面白い登場人物を作り、それらがその世界の中で暴れると面白くなりそうだ、という期待感が書き手を刺激するわけですし、視聴者もワクワクするわけです。

 仮定から具体的にしていく

「もし、男が女に変わったら?」からどのような話が生まれるかは、無限の可能性があり、特定できません。恋愛についても語れるだろうし、男社会と女社会を評論するような内容でも作れるでしょう。そのままでは、お話の焦点がぼやけていて何が言いたいのかわかりません。そこで、「もし、男が女に変わったら?」と「恋愛」というテーマをくっつけてみます。そうすると、書きたい内容はかなり明確になってきます。どうして、女になってしまったのか、身体的に女になったのか精神的に女になったのか、主人公は何歳くらいか、職業は何か、どんな時代か、男に惚れるのか女に惚れるのかなどなど、いろいろ具体的になってきます。そうやって具体的になってきた情報から、さらに恋愛についての何が言いたいのか、テーマを煮詰めていきます。具体的になったテーマから、主人公の状況や職業、世界の様子などをどんどん詳しく具体的にしていきます。そうやってできたものが設定です。

考えを具体的にしていくときに便利な言葉は「なぜ?」です。浮かんだアイデアに対して「それはなぜなのか?」と、自分に問いかけて答えを導いていってください。

世界観、設定、テーマが決まれば、あとは書くだけです。そのために資料が必要なこともあるでしょう。以前お話したように、世界や人物のバランスが崩れたり、何かが欠けることによって、それを回復しようという動きが起こります。その動きに従って書き進めていけば物語は書かれていくと思います。山あり谷ありで視聴者をひっぱり、行き着くところへ導いてください。

 特異な状況を発生させる

登場人物の目の前に平凡な世界から離脱させてしまうような特異な状況を発生させるのは、短編向きで良い方法です。

  • 目の前に死体が転がっている
  • 目の前に爆弾が転がっている
  • 目の前にワープトンネルが発生する
  • 目の前に底なしの穴が開いている
  • 目の前に幽霊が現れる
  • 目の前に宇宙人が現れる
  • 目の前に拳銃が転がっている
  • 目の前に核爆弾のスイッチがある
  • 目の前に金塊が積まれている
  • 目の前に裸の女(男)が立っている

などなど、僕たちの日常世界ではお目にかかれない特殊な状況を用意してあげるわけです。そこで登場人物がどういう反応をするのか。登場人物が2〜3人くらいなら、コントなどが作れそうです。提示するものは人間の欲望を刺激するものが良いでしょう。金、権力、食、性などは、誰でもが持つ欲望でお話にしやすい材料になるでしょう。人の願望や絶対に起こってほしくないことが目の前に提示されるとなんらかのアクションが生まれるはずです。不条理系にしたいときは、状況設定や登場人物の設定をさらにありえない方にもっていく必要があるかもしれません。

 日常と非日常を混ぜる

僕たちが日常として受け止めていることと、非日常的なものを混ぜると面白い状況が生まれます。

例えば、「運動会と死体」とか。運動会は元気な人しか参加できません。そこに運動能力ゼロの死体がいるということで奇妙な状況が生まれます。死体と二人三脚、死体と騎馬戦、徒競走のスタートラインに一列に並ぶ死体、死体の組体操、死体を熱心に応援する応援団。どれも、基本的に成立しませんが、そこをあえて無理矢理展開させていきます。こういうのは登場人物をどうするかがキーになりますね。死体を扱う人ということで、葬儀屋がPRのために死体運動会を開催してみた、とか、遺言で死んだら運動会に出してほしいと頼まれたとかでしょうか。ほのぼのした運動会という日常的な風景に、死体という日常空間にあるべきではないとされるものが混在するとかなりシュールな空気になります。さらに「運動」と「死」という相容れないものを無理矢理ぶつける面白さも得られます。

同じような考え方で、光と闇、戦争と平和、未来と過去、天才と馬鹿、男と女、新鮮と腐乱、熱いと冷たい、騒と静など対立する要素をとっかかりに、日常と非日常をぶつけてみると面白いネタができるかもしれません。ポイントは日常との対比です。対立する要素をぶつけても、僕たちと接点のない話はあまりピンと来ないからです。少し前流行った「やわらか戦車」はこのパターンの良作のひとつですね。

魔法少女とか超能力少年とかも非日常的な存在で、そういう人が日常生活である学校とかに入ってくると面白いには面白いのですが、すでにそういう作品が溢れているのでなかなか難しいですね。そういうのはすでにジャンルとして確立するほどたくさんの作品があるので、どちらかというと定番ネタということになってしまいます。そういう既存の作品たちと比べられてしまうようなネタで、他の作品との差を出し、面白いと感じてもらうためには、かなり工夫が必要です。魔法の新しい解釈を与えるとか、何か他ジャンルの要素とくっつけるとか、今までとは違う魅力を取り入れる必要があります。魔法は数学であるとか、脳が鍛えられるお得要素があるとか。実際に最近はそういうのが増えてきてるようです。

 日常的な風景を見直そう

一般的な視聴者が見て共感できるものは、いわゆる「いつもそこにあるもの」や「恒例の○○」、「毎日利用する○○」です。例をあげると、コンビニ、ガソリンスタンド、電車、バス、定食屋、ファミレス、横断歩道、信号機、電信柱、交通標識、トイレ、風呂…のような設備・施設や、上の例にも出ていた運動会、遠足、朝礼、朝のゴミ置き場、お正月、クリスマス、七五三、お花見、成人式、バレンタインデー、誕生日パーティー、送別会、夏休み、夏休みの宿題、朝のラジオ体操、入学式、卒業式、受験、お祭りのような定例イベント、食事、トイレ、風呂、就寝、起床、歯磨き、通勤、通学のような毎日やっていることなどです。

ああ、あるある!という風景が使えるネタです。ちょっとしたイライラすることとか、恥ずかしかったこと、おかしかったことは、大抵みんな経験があったりします。混んでる電車の中で新聞広げて読んでるオッサンがウザいとか、イスがきしんでオナラみたいな音がでて恥ずかしかったとか。そういうのは、みんな経験があったりするので、思わず共感してしまうのです。

 コント、漫才、落語、1コママンガ、4コママンガなどを参考にしてみる

短編作品は、あまり複雑な話をするのには向いていません。何か一つのネタをシンプルに面白く見せる方が向いています。そこで、コント、漫才、落語、1コママンガ、4コママンガ、小説のショートショートなどが参考になるでしょう。これらの作品はどちらかというと喜劇が多いですが、中には悲劇やSFものなどもあります。短い時間で充実した内容をどのようにして作っているのか研究してみてください。

 いい絵をつくれ

面白い絵だなぁ、美しい絵だなぁ、カッコイイ絵だなぁと思える絵が浮かべられるものを考えてください。いい絵が作れそうにないテーマは映像には向いていないかもしれません。もしくは、現在の自分には手におえないテーマなのかもしれません。イメージできないというのは、自分の想像力が追いついていないという可能性があります。はじめはイメージできなくても、資料を集めて、イメージを形作っていくというのも有効です。実際にどんどんスケッチを描いて模索していきましょう。いい絵が一つもない映像作品なんて面白くもなんともないでしょう?黒澤明監督は、映画はすべてのカットがいい絵になっていなくてはならないと言っていたそうですよ。

 表現媒体に特化させる

どのような手法で作品をつくるのかを考慮することも重要です。手書きのアニメーションなのか3DCGのアニメーションなのか、実写映像なのか、ゲームなのか、小説なのか、マンガなのか…などなど、表現する手法やメディアにあった、もしくはその手法やメディアならではのアイデアを入れていきたところです。手描きイラストでしか表現の難しいこと、3DCGだからこそ実現可能なこと、それらを上手く加味していくことで面白さは何倍にもなるでしょう。表現に見合った技術を組み合わせるのも有効な手段です。イラスト、CG、人形、写真、ビデオなどなど、大学のカリキュラムで教えられたものもそうじゃないものもあるでしょうが、面白いと思う技術をうまく使っていきましょう。これ実写でやればいいんじゃないの、って言われるアニメーション作品は企画段階で何か足りないのです。

 テーマを主人公に言わせるな

実際に書いていくときに、シナリオや台詞の中にテーマを書いてしまわないようにしましょう。テーマは、映像でみせるというか読み取ってもらうのであって、直接言ってしまったら興醒めもいいとこです。というか、もし言葉で言い表してしまったら、映像はいらんじゃないか、ということになります。気をつけてください。

「もし、男が女の体になったら?」という状況設定、「恋愛」というテーマで書いていて、その話で語りたい内容が、「男と女は永遠にわかりえないし、愛情も一方的な気持ちの押し付けなのかもしれないが、それでも異性を愛することを止められない」というメッセージ性を持つものだとして、そのことを主人公がしゃべってしまったり、ナレーションで言ってしまってはどうしようもないものになってしまいます。作品内の主人公の行動や、カットの並び、お話の進行によって汲み取れなければなりません。