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プロット(構成)

構成とは

 ストーリーとは会話である

友達に面白かった映画を伝えようとするとき、何が面白かったのかとか、どういうシチュエーションだったのかとか、どんな登場人物がいたのか……などなど、すべてのシーンや台詞を話すわけにはいかないので、いろいろ要約したり、ポイントを絞って「ここが面白かったんだ」という主張をすると思います。そのとき、面白いという感情を共有してもらうために様々な工夫をしているはずです。これを話してから、ここを話して……、ここが面白かった部分だからネタバレにならないように気をつけようとかいう具合です。

この普段の会話におけるネタの配分とか順番の組み合わせが構成です。まず、どんな登場人物が出てくるのか、どんな状況なのかなどを伝えるところから始めて、事件は思わぬ方向に展開していき、ラストに向かいます。それぞれのネタのボリューム、ネタを出す順番、ネタを語る視点、話すスピード、話すときの表情・姿勢・距離、これらを上手く組み合わせられれば、聞いた人も面白く感じられるでしょう。

 アニメーションやゲームは視聴者を引きこむサービスである

アニメーションでもゲームでも、視聴者がいるんだということを忘れないでほしいと思います。会話を例に出したのは、会話とは、聞き手がいて初めて成立するものだからです。視聴者と会話をしている空気を持ってほしいのです。これがあれば、構成を考えるときに目標がもてると思います。見てる人が付いてきてるかな、飽きてないかな、面白がってくれてるかなと。もし、自分ひとりが満足すればよい、もしくは、コンセプトを満たせばそれでよいという作品であれば、こんな構成をわざわざ考える必要はないでしょう。好きに作ればよいのです。見てる人に楽しんでほしいという人は、構成について一生勉強しなければならないでしょう。ただ、「構成」という言葉は重い印象があって、身構えてしまいがちなので、まずは見てる人との会話なんだというところから入るのがいいのではないかと思ったのです。

見てる人をお話に引き込むためには、感情移入してもらうのが一番でしょう。それを考えれば、一人称が一番かもしれません。「僕は……」「私は……」「俺は……」「拙者は……」「あちきは……」とか、なんでもいいですが、自分のストーリーだと思って書いてみるということを提案しておきます。出来上がったストーリーは、三人称からの話に変換することもできるでしょう。「僕は……」を「あいつは……」に変えていけばいいのです。

 ネタが大事

面白い話はなんといっても、ネタが命です。面白いネタが浮かべば、あとはそれをどうやって伝えるか考えればいいのですが、ネタがないのに構成は考えられないのです。ネタの考え方についてはいろいろあるので、他のページ「状況設定から考える」「状況設定から考える」「環境設定から考える」「キーワードから考える」「自分が抱えている問題から考える」「ニュースから考える」「他作品からのインスパイア・他作品への回答としてつくる」などを見たりしてみてください。

 起承転結・三幕構成

お話の構成というと、「起承転結」や「三幕構成」が思い浮かぶのではないでしょうか。これらは、お話を面白くする公式のようなものですが、基本的に同じようなものです。ストーリーというのは、連続した一連の時間を描いたものです。連続した時間、つまり線なのですから、何分割にでもできるでしょう? 3つとか4つのように少ない数字でなくてもいいのですが、それだと指針を立てにくいので3つくらいに分けて考えようということです。

起承転結

起承転結は「起」「承」「転」「結」に分けられます。

    • 物語の発端、状況設定
    • 物語の展開
    • 物語のさらなる展開、クライマックス
    • 解決

三幕構成

  • 第一幕 発端
    • 状況設定
  • 第二幕 中心
    • 物語の展開、葛藤
  • 第三幕 結末
    • クライマックス、解決

 ストーリーの必須要素

  • 主人公
    • 単数であっても複数であっても構わない。ストーリーは主人公の視点で語られる。
  • 敵対者
    • 敵というのは、主人公に対立・衝突するもの。目標、難題、試練といってもいいかもしれない。悪人、社会常識、思想、恋人などが相当する。この敵対者と対峙、交戦することで主人公は葛藤したり変化していく。

主人公

主人公は、何か目標を持ち、困難に挑みピンチに陥ります。そしてピンチの中から解決の糸口を見つけ出し、なんらかの答えを出します。

ちょっと自分のことを考えてみてほしいんですが、一人の人間が抱いている目標というのはいくつもあったりします。もっと金を稼ぎたい、いいクルマが欲しい、恋人がほしい、犯人を捕まえたい、元の世界に戻りたい、レベルを上げたい……など、同時にいくつも目標を持ってるのが普通です。シンプルに一つの目標に向かってストーリーを作れば、わかりやすい話になるでしょうけれども深みに欠けてしまうかもしれません。場合によっては、主人公にいくつかの目標を持たせる方がよいでしょう。そして、その目標それぞれに敵対者と結末を用意してあげてください。

目標があって、その目標にまっすぐに到達できてしまったら、面白くありません。目標到達までの山あり谷ありの道筋、いろんな苦楽のお話がおいしい部分です。メインは困った話、苦しんだ話です。苦しみの中に輝く何かが見えるのです。輝きの中の輝きは目立ちません。大きな波のうねりがあるもの、ドラマチックな話というのは、そういう話でしょう。

敵対者

ここでの敵対者というのは、主人公の目標に対して障害になるもの、対立するもの、もしくは主人公を困らせる人(もの)です。ヒーローものであれば悪役怪人、スポ根であればライバル、ラブコメであれば好きな人、ミステリであれば犯人、社会派ドラマであれば社会通念などです。主人公が目指す目標の障害で、主人公はそれらと対決したり対峙していきます。主人公は何度か敵対者と遭遇し、敵対者の強大さを知らされ、打ちのめされるのです。

主人公と敵対者は、対照的なものであると良いでしょう。真っ向正面からぶつかった方が面白いです。天使と悪魔、静と動、明と暗、力と技。ジャンルが何であれ、主人公と敵対者の主張が同じ方向だったり、軸がずれていたりすると、ぶつかれないのです。

その他

主人公と敵対者がいればドラマは成立します。しかし、ストーリー展開上この二つだけでは進行させにくいので、脇役たちが必要なのです。主人公を助けたり、新たなフィールドに導いたり、スムースに話を進行してくれたり、犠牲になったりと、様々な活躍が期待できます。

三幕構成

以下のテキストは主に、『ハリウッド・リライティング・バイブル』 リンダ シガー (著) を参考に作成しています。ここでは、かなり簡潔な形で三幕構成について書いていますが、『ハリウッド・リライティング・バイブル』ではもっと詳しくシナリオ作成の構成について書いてあります。『映画ライターズ・ロードマップ―“プロット構築”最前線の歩き方』 ウェンデル ウェルマン (著) も実践的な内容でオススメです。

 第一幕(発端・状況設定)

状況設定としてやっておかないといけないこと

ここが最も重要な部分です。状況設定がいい加減だと後半が厳しくなります。視聴者にストーリーを理解するカギになる全ての情報をここで与えていきます。柱になる情報、ストーリーの方向性を提示します。あとから、設定をつけ足したりすると、苦し紛れに設定を付けくわえたような印象を与えることがあるので気をつけましょう。これは当然のことですが、設定はストーリー全体を貫いてないとどこかに破綻がでます。登場人物たちがストーリーの中で謎を解き明かしていく(設定を見抜いていく)過程は重要ですが、謎が暴かれるまで登場人物たちが理解していなかっただけであって、はじめから設定に則って書かれていなければなりません。ミステリなどはその最たる例でしょう。

  • 主人公は誰か
  • 何についてのストーリーか
  • どこを舞台にしているのか
  • コメディか、ドラマか、悲劇か、人間喜劇か

作品のビジュアル・イメージ

最初に作品全体を表すビジュアル・イメージを伝えます。

  • 場所
  • ムード
  • 質感
  • メタファー(隠喩)

冒頭はダイアローグから始めるよりも、絵で見せていく方が有利です。言葉の理解よりも映像からの理解の方が直観的に情報を把握できるからです。イメージ、フィーリング、ロケーション、ペース、スタイルを伝えましょう。

バランスを崩すきっかけ

イメージを伝えたら、次は事件のきっかけを作ります。他のページにも書きましたが、平和が崩れる、均衡した状態を壊す、バランスが崩れるきっかけになる「何か」を与えましょう。バランスが崩れていくことで事件は始まっていきます。いくつか例示すると、誰かが引っ越したきたとか、何か不思議なものを拾ったとか、何かを頼まれたとか……いろいろ考えられますが、最初のインパクトを与えます。

問いかけ

作品の最後まで見終わったとき、主人公がどのように変化したか、目標を達成できるのか、世界はどう変わるのかなど、作品を通して視聴者に問いかけていきます。主人公が明確な目標や目的をもっていれば、その目標が達成できたかどうかが問いかけになるでしょう。この問いかけを軸にストーリーは進行します。状況設定時の問いかけと全く関係ないラストを迎えたりすると、見てる方は何が何だかわからなくなってしまいます。自分が何についてのストーリーを書いているのか自覚しておきましょう。

 第二幕(展開)

状況設定が一通り進んで、お話は展開していきます。バランスを崩した状況は何らかの事件を引き起こします。自覚的か無自覚かわかりませんが、主人公はその事件に関わっていきます。事件の過程で更なる設定が明かされたりもします。主人公の葛藤は何か、敵対者は何かなども次第に明らかになっていきます。

第二幕序盤は状況設定も兼ねていたりします。事件が進みつつ、新たな設定が提示されていきます。

主人公はこの展開部で何か行動を起こします。状況設定で提案された目的を達成するために何らかのアクションを起こすのです。しかし、失敗します。なぜなら成功してしまったら物語は終わってしまうからです。もし成功しているかに見えても実はそう思わされているだけなのです。主人公は、失敗した反省から次は違う手を講じなければならなくなるでしょう。そして、また行動を起こしますが、失敗します。主人公は窮地に追いやられていきます。この展開部における行動と失敗の繰り返しを何度繰り返すかで作品の時間は変わってくるでしょう。ですが、単純に行動・失敗の繰り返しを何度も繰り返していては面白くありません。1つの行動(展開)の結果にそれぞれ何か意味を持たせなければならないでしょうね。さらに、ターニングポイントも重要です。

ターニングポイント

お話の方向を180度ひっくり返す事が起きます。お話がずっと同じ方向に進んでいくだけだと眠い話になってしまいます。視聴者の興味を引き続けるためには、刺激を与えていかなくてはなりません。どんでん返しの連続でお話を作っている場合も、同じテンポで続けていると刺激がなくなってきますので、どこかで大きなターニングポイントを入れる必要があります。劇場作品の場合、30分頃に一回、映画終了の20分前頃にもう一回入ります。短編作品の場合、2回入れるのは難しいかもしれませんが、どこかに入れる必要があるでしょう。

ターニングポイントの役割は、

  • ストーリーを新しい方向へ導く
  • 「問いかけ」をもう一度提示し、視聴者に問いに対する答えへの思いを巡らすようにする
  • 主人公が何かの決定を下す。そのことで主人公の危険度が高まる
  • ストーリーを次の展開へ押し出す
  • 新しい舞台へと導き、ストーリーを違った視点で見せるようにする

2回目のターニングポイントでは、最後に向けてテンポを早める役目ももっています。テンポアップしたストーリーはクライマックスに向けて進んでいきます。

 第三幕(解決)

ストーリーはテンポを早めてクライマックスへと突き進んでいきます。最高に緊張したシーンを過ぎると今まで問われていた問題に答えが提示される解決部になります。緊張がほぐれ、すべての問題がクリアになり、帰路につく、もしくは旅立っていく。

 構成チェックリスト

  • イメージから始まっているか
  • イメージはストーリーに対するスタイルやフィーリングを与えているか
  • ストーリーをはじめるための明確なきっかけはあるだろうか
  • それは力強く劇的だろうか
  • なるべく行動によって表現されているだろうか
  • メインの問いかけはクライマックスと結びついているだろうか
  • 問いかけは明快だろうか
  • 各ターニングポイントでその問いかけは再度なされるだろうか
  • 第1ターニングポイントは明確だろうか
  • それは展開部を導いているだろうか
  • 第2ターニングポイントは明確だろうか
  • それはクライマックスを導いているだろうか
  • クライマックスはしっかりフィニッシュさせられているだろうか
  • 解決は簡潔なものになっているだろうか